500. ヴァードモイからの視察
キブリンキ・サルタスたちが勢揃いして村づくりをしているため、キブリンキ・サルタスたちを各村に配布して回る本来の予定は一時中断である。
輪作用の畑を作る分まで考えると、この村に残る予定のキブリンキ・サルタスだけではきついようだ。
もっとも、あと1週間もあればそちらも終わるらしいし、私としては待っているのも悪くないんだけどね。
そう考えて村予定地で過ごしていると、大社島からお客様がきた。
私に用事があるらしい。
「なんでしょう、用事って?」
「マクファーレン公国より使者の方が到着いたしました。パルフェを連れ帰るにあたり、危険がないかの確認にいらっしゃったそうです」
ああ、こっちに来る前にお願いしていたやつだ。
もう来るなんて結構急いで来たみたいだね。
そこまで急ぐことでもなかったのに。
「ということは、私が戻って事情を説明しなければなりませんね」
「お手数ですが、ご足労いただけますか?」
「わかりました。撤収の準備を整えたらすぐに大社島へ向かいます」
撤収の準備とはいってもキリ様やリク様へのあいさつとキブリンキ・サルタスたちへの指示出し、私に付いてきたパルフェに少し離れることを言い聞かせるくらいだ。
移動もパルフェ車があるのでそんなに時間はかからない。
1週間もしないうちに大社島まで戻れた。
そこから1日挟んで八天座の街だ。
さて、誰が様子を見に来ているんだろう?
「あ、リリィ! ようやく帰ってきた!」
「コウ様? なぜここに?」
「お父様からの指示よ。リリィが新しく増やしたっていうテイムモンスターに危険性がないか調べて来いって」
「……本当ですか?」
「……本当よ」
あ、目をそらした。
これは話を聞きつけたコウ様が無理矢理乗っかったんだな。
本来は誰が来たんだろう?
「はは。コウをいじめるのはそれくらいにしてやってもらえるかい?」
「あ、ヴィク様もいらっしゃったんですね」
「まあ、本来は僕が視察団のリーダーになる予定だったんだ。よろしく、リリィ」
マクファーレン公王家の三男、ヴィク様は正式にコウ様の婚約者となり、いまはヴァードモイに別邸を建てて暮らしている。
コウ様と一緒にヴァードモイ侯爵様から治政の教育を受けているそうだ。
次期ヴァードモイ侯爵はコウ様だけど、その配偶者はヴィク様になる。
ヴィク様にもコウ様をサポートするだけの知識は必要なんだそうだ。
ちなみに、ヴァードモイ侯爵様の愚痴によると、コウ様の覚えがあまりよくなく、サポートとしてヴィク様は欠かせないだろうという話である。
コウ様、もう少ししっかりして!
「それで、パルフェっていうモンスターは、あの牧場の中で寝そべっている牛みたいな生物かい?」
「はい。気性も穏やかで本物の牛よりも賢いですよ」
「ふむ。近づいても大丈夫かな?」
「大丈夫だと思います。いま放牧地に入る許可をもらってきますね」
モンスター牧場の放牧地には許可がないと立ち入れない。
基本的に中にいるのはパルフェだが、パニックを起こせば力の強いパルフェが暴れ出すことになる。
そのため、敷地に入るときと放牧地に入るときで2段階のチェックがなされるのだ。
「放牧地に入る許可を取ってきました。あちらから入れます」
「ありがとう。さあ、コウ、行こうか」
「はい。それにしても、このパルフェってモンスター、人がこんなに近づいても反応しないのね」
「モンスター牧場にいるパルフェは誰かにテイムされているパルフェですからね。野生のパルフェはもっと警戒心が強いらしいです」
「そうなんだ。でも、これだけ大人しいなら連れ帰っても問題なさそうなんだけど」
「僕たちに出せるのは政治的な判断だけだよ。遅れてやってくるテイマーギルドのギルドマスターたちがモンスターとして持ち込んでいいかを判断する。そっちも許可が出ないと持ち込めないからね」
「はあい。それにしても、本当に大人しい……」
コウ様はパルフェを相当気に入ったらしい。
わがままを言って連れ帰るとか言い出さないよね?
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私、蜘蛛なモンスターをテイムしたのでスパイダーシルクで裁縫を頑張ります! あきさけ @akisake
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