499. 新たな村の設営
1週間ほど遅れて残りのキブリンキ・サルタスたちがやってきた。
そこからさらに畑作りはスピードを増し、タラトに頼んで作った池から水を引いて用水路まで作ってしまう。
畑作りから半月ほど経過したときにやってきた村の人たちや作業をする大工さんたちは、非常に驚いていたね。
『村長、畑は作っておいたぞ』
{あ、ありがてぇ。だが、お前さん、儂らの言葉がわかるんか?}
『我々は読心術と伝心術で会話する。それで、この程度の広さなら管理できそうか?』
{そうだなぁ。この程度ならなんとかなるべ}
『わかった。では、今年用の畑はこれくらいにしておこう』
{今年用?}
『土質がよくないからな。数年単位で輪作を行い、土壌を豊かにしていく。キリたちから輪作が可能なことは聞いているので任せろ』
村長さんは頭の上に疑問符を浮かべたような顔をしている。
キブリンキ・サルタスの言う『輪作』っていうものがわからないんだろう。
この村にも指導役のキブリンキ・サルタスが何匹か残るから、そちらとうまくやってもらいたいものだ。
「キリ様、これでこの村に必要なのは建物と井戸でしょうか?」
「そ、そうですね。キブリンキ・サルタスたちがパルフェや自分たちの暮らすモンスター牧場と村を囲む柵を作ると言っておりますし、人の手を加えなければいけない場所は建物と井戸掘りになります。ただ、建物はともかく、井戸はうまくいくかどうか」
「井戸でしたら穴を空けてもらえればタラトが水を引き寄せます。できるよね、タラト?」
『その程度ならね。さすがに縦に深い穴を掘る技術はないからそっちは任せることになるけどね』
「タラト様はなんと?」
「穴さえ掘ってくれれば井戸はなんとかするそうです。私も村の建設とかには詳しくないので、井戸を掘る場所の指定はお願いします」
「は、はい」
キリ様は大工たちの輪の中に加わり、村の建物をどこに建てるかについての打ち合わせに加わった。
代わりに、その様子を眺めていたリク様が私の方にやってくる。
リク様もなにか話があるのかな?
「リリィ殿、今回は本当に助かった。一年がかりで作るはずの村が、建物を除けば1カ月もかからないうちに完成するとは思わなかったぞ」
「いえ。まだ、モンスター除けの柵なども残っていますし、やることは多いですよ」
「それとてそれほどかからないだろう? キブリンキ・サルタスとパルフェがいれば近くの森から木を切り出してくることも難しくはない。家を建てに来た大工たちもいることだし、細かい作業は大工にやらせてキブリンキ・サルタスとパルフェが仕上げとして柵……あるいは防壁を建てていく方がいいだろう。本当に働き者でいいモンスターだ」
「ありがとうございます。彼らも野菜作りにかける情熱はものすごいので、そこを理解してやってもらえると助かります」
「わかった。確か、普段は村の外でも活動したいのだったな。そこも猟師などの同行という条件で許可しよう」
よし、売り込みは完璧だったね!
気に入ってもらえて本当によかった。
「ところで、相談なのだが、キブリンキ・サルタスをもっと貸してはもらえないだろうか? 代わりに八天座の島からはパルフェを貸しだそう。返事は急がなくてもいいし、そちらの国でパルフェを受け入れられるかもあるだろう。頭の片隅にでもおいておいてくれ」
ふむ、八天座の島にキブリンキ・サルタスの貸し出しか。
悪くはないかな。
毎年、私のところにキブリンキ・サルタスがやってくるようになって数があまり気味だったんだよね。
既に配置を終えている地域にさらに送ったりしてバランスを取っているけど、それでもあまり気味だったのだ。
今回、八天座の島に来た子の反応次第だけど、新しい派遣先に八天座の島を加えてもいいかもしれない。
テイムされているモンスターにも友好的だし、悪い案じゃないよね。
これも戻ったらヴァードモイ侯爵様と相談かな。
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