496. 水が涸れた村
2日かけて私たちは問題の村へとやってきた。
そこでキリ様とリク様にお願いして通訳をしてもらい、井戸などを見て回ったが本当に水が涸れていて一滴も出てこない。
どうしたものか。
「タラト、この近くに水源はある?」
『うーん。水の気配が近くにないかな。僕は水が専門じゃないから詳しくはわからないけど、近くに地下水はないと思うよ』
うーん、どうしよう。
近くに水源がないんじゃどうにもならないな。
さて、困った。
「あの、タラト様はなんと?」
「はい。近くに水の気配を感じないそうです。おそらく、地下水脈の流れが地震で変わったんじゃないでしょうか」
「そうですか……。タラト様のお力で新しい水源を引いてくることはできませんか?」
「タラトって氷の蜘蛛なので、水を作ることはできないんですよね。前にやったときは、地下にあった水源から氷の柱というか、針を伸ばして地上まで湧き上がらせたので」
そうなんだよね。
タラトにできることは水源を作ることではなく、水を氷に変えて移動させてくることだ。
その性質上、元となる水がなければなにもできないし、水に圧力をかけられないなら湧き上げることもできない。
いろいろと難しいのである。
「では、この付近では新しい井戸や池を作るのは難しいのでしょうか?」
「ちょっと無理っぽいです。村のほかの場所を探してどこかに水源があればそこから水を湧き上がらせます」
「お願いします。私たちもいろいろと手は尽くしたのですが、根本的な水不足には打ち勝てず……」
「自然災害って怖いですからね。村の中をしばらく自由に歩き回ってもいいですか?」
「はい。とものものを付けますのでなにかあればお申し付けを」
キリ様から許可をもらい、村の中をあちこち見て回る。
畑らしき場所は、きちんと耕している痕跡があるけどなにも育ててはいないようだ。
どうやら水不足で作物も育てられないらしい。
「キブリンキ・サルタス、この村の土の質ってどんな感じ?」
『そうだな、中の下といったところか。水はけがいい、というと聞こえはいいが、実際には水分を保持できない地質のようだ。これでは作物を育てるのに苦労するだろう』
キブリンキ・サルタスから見ても、この村の土はあまりよくない土地なのか。
こんな土地だし水がなかったらなにもできないよね。
半日費やして村中を回った結果、水源になりそうな場所は見つからなかった。
村の外も少し歩いたんだけど、それでもなにも見つからなかったわけで。
これは本腰を入れて水源を探さなくちゃだめかなぁ。
あるいは、本当に移住してもらうか。
どっちがいいんだろう?
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