493. 八座との会議 八天座の薬
「その薬に中毒性はないのでしょうか? また、取り扱いに際し危険な点は?」
やっぱり薬ともなると取引にも慎重にならざるを得ない。
特に、回復力の高い薬なんて一歩間違えれば戦争の火種だ。
そこは大丈夫なんだろうか?
「中毒性はないよ。むしろ、飲み薬なんだが、まずくて二度と飲みたくない者の方が多いね。取り扱いは……基本的に引火したりすることはないけど、水に溶けると使えなくなるからそこだけ注意だね」
「なるほど。それで、その薬を巡って戦争などは起きないのでしょうか? 強力な薬とわかれば、その利権を求めて攻めてくる者がいてもおかしくはないのですが」
「そこも大丈夫だよ。なにせ、その薬を作るにはモンスターの素材がいる。薬師たちは全員そのモンスターに保護されているから、薬を奪おうと攻めてくる者たちがいれば、そのモンスターを相手にしなくちゃいけないだろうね」
「そのモンスターとは?」
「龍神様さ」
龍神様か……。
テイマーギルドの資料でちょっとだけ見たことがあるけど、前世でいうとドラゴンは西洋の竜で龍神は東洋の竜だ。
つまり、龍神は蛇が角の生えた頭と手足を持っている姿を取っているはずである。
ドラゴンも龍神も人間などよりはるかに高度な知能を持ち、あまり人里では暮らさないと聞くけど、この島では違うんだろうか?
「あの、八天座の島には龍神様が暮らしているんですか?」
「八天座の島々の中に『龍神峰』という島があるんだよ。そこで龍神様たちが大勢暮らしていらっしゃる。今回、取引に使おうとしている薬は、龍神様の抜けた鱗を煎じて作った粉薬だよ」
「……龍神様方の許可は大丈夫なんでしょうか?」
「龍神様たちは抜け落ちた鱗や皮は人間が好きに使ってもいいとおっしゃってくださっておる。交易品にする前にお伺いを立てるが、大丈夫じゃろう。以前、交易品にしていた経歴もあるしな」
前に交易品にしていたこともあるんだ。
あれ、じゃあ、なんでいまは交易品じゃないんだろう?
そこのところを聞いてみると、なんともわかりやすい答えが返ってきた。
薬を奪おうとして攻め込んできた相手を龍神たちが討ち滅ぼしたそうだ。
「欲を出せば龍神様が攻め滅ぼしに出る。その後も、龍神様は交易品として外との交渉に使ってもよいとおっしゃってくださったし、いまでもわずかではあるが輸出しておる。どうじゃ、悪い話ではなかろう?」
悪い話ではないけど、龍神様がどう反応するかだよなぁ。
これは一度龍神様にごあいさつした方がいいかも。
龍神ってどんな姿をしているんだろうなぁ。
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