489. 海を渡りたいパルフェたち

「そうですか、パルフェたちの一部がリリィ様の故郷に行きたいと」


「はい。そうらしいです」


 あの場にいても答えが出ないので一度宿に戻り八座神の大神殿から人を呼んで事情を説明する。

 来てくれたのはリク様の配下の人だ。

 リク様同様、モンスター関連の担当らしい。


「困りましたね。パルフェを八天座の島々の間でやりとりをすることは珍しくもないのですが、それ以外の場所に連れて行くなんて前例がありません。そもそも、パルフェが外に興味を持つだなんて」


「うーん。どうにも、私が連れてきたモンスターと意気投合しているうちに興味を持ったみたいで」


「なるほど。しかし、私の一存では決められませんね。闇の座様を始め、八座様の承認が必要になるでしょう。それに、本当にパルフェたちが外に行きたがっているのかを闇の座様に確認していただかねば」


 そうなるよねぇ。

 さて、どうしたものか。

 どうしようもないか。


 事情を聞いた神官は神殿へと戻って行き、私たちは私たちでパルフェを連れ出せることになったときの対応を相談である。

 なにせ、マクファーレン公国にはいないモンスターを連れ込むのだ。

 基本、温厚で人に危害を加えないといってもモンスターなのは変わらない。


「プリシラさん、アリゼさん、どうしましょう?」


「どうするか、ねぇ。キブリンキ・サルタスたちと意気投合しているということは、マクファーレン公国に残っているキブリンキ・サルタスたちともうまくやっていけそうだし、そこは心配なさそうよね」


「問題は存在しないモンスターをそれなりの数連れ帰るという事実でしょう。リリィ様がテイムしているといっても、既にリリィ様はキブリンキ・サルタスを数百匹テイムしています。そこに別種類のモンスターが加わるとなれば、不安を覚える者もいると考えられます」


 やっぱりそこかぁ。

 私としては特に問題はないんだけど、そもそも数百匹をテイムした状態でなんともないという状況がマクファーレン公国だと異常だからなぁ。

 そこの不安を解消できないと、連れ帰っても安心してもらえないよね。


「八座様がどう決定なさるかにもよるでしょうが、私たちにできることは許可が下りたときに備えることです。具体的には連れ帰っても問題ない状況にいたしましょう」


「アリゼさん、連れ帰っても問題ない状況って?」


「できればマクファーレン公国のテイマーギルド統括ギルドマスター、無理であってもヴァードモイのテイマーギルドマスターに来ていただくのです。そこでテイム状態に問題ないことを確認していただきましょう。それから、ヴァードモイ侯爵様にも手紙を送り、パルフェたちを連れ帰る許可をいただいておきましょう」


 私たちができることはそれくらいか。

 想像していなかった事態とはいえ、こうなった以上はしっかり対応しなくちゃね。

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