488. モンスター牧場の様子

 私たちがパルフェに近寄っていくと、パルフェもこちらに気が付いたようでゆっくりと近づいてきた。

 なんというか、のっしのっしという雰囲気でいかにも力強くも足が遅そうである。


「グッ? グー! (遊びに来たの? 一緒に遊ぼ!)」


「様子を見に来ただけなんだけど、なにをして遊ぶの?」


「グー、グッグー! (力比べがいいな!)」


 力比べか……。

 あっちでキブリンキ・サルタスともやってるけど、キブリンキ・サルタスは6匹に増えてもまだ引っ張れないでいる。

 相当力が強いよね。


『リリィ、僕がやるよ』


「タラトが? いいの?」


『うん。どれくらいの力があるのか試してみたい』


 タラトが相手をすることになったので、タラトの胴とパルフェの胴に縄を結びつける。

 そして、私の合図でお互いに引き始めるんだけど、両者ともにびくともしない。

 これ、タラトが手加減をしている?


「グー! グー!! (強い! 参った!!)」


『僕の勝ちだね。でも、パルフェもかなり強かったよ』


 タラトとパルフェの間では会話ができないため私が間に入って伝えると、パルフェは力を褒められたことをとても喜んでいる。

 パルフェにとって力はもっとも褒められると嬉しいことのようだ。

 なんだか、見ていて微笑ましいな。


『契約主、少しいいか?』


「ん? どうしたの?」


 パルフェを眺めていたら、キブリンキ・サルタスが1頭のパルフェを連れてやってきていた。

 そのパルフェは普通のパルフェとは違い、黄色い毛をしたパルフェだ。

 体も一回り大きい。

 どんな存在なんだろう?


『この牧場のパルフェをまとめ上げているパルフェの上位種だそうだ。今回、草原のパルフェたちを連れてきた契約主に一言お礼を言いたいとのことなので連れてきた』


「お礼を言われるほどのことでもないんだけどな」


『あちらからすれば、そういうわけにもいかないらしい。あいさつを受け入れるか?』


「うん。特に問題はなさそうだし、通訳してもらえる?」


 契約しているわけじゃないからパルフェの言っていることはわからない。

 というか、契約している子たちもなんと言っているかわずかにニュアンスが伝わってくる程度だ。

 慣れていないのもあるだろうけど、キブリンキ・サルタスみたいに念話ではっきり伝えてくれる相手に慣れすぎたかな。


「グモー。グッグー」


『仲間を助けてくれてありがとう。本当に感謝している』


「いいえ。私もたまたま通りかかっただけだから」


「グッ。グッグモー。グー」


『それでも通りかかってもらわなければ仲間に被害が出ていたかもしれない。野生のパルフェはリクに頼ることを知らないからなおさらだ』


「こういうときって普段はリク様が対応しているの?」


「グー。グッ」


『そうだ。野生のモンスターになにか異変があった場合の対応は、リクがすべて行う』


 やっぱりリク様って大変なんだ。

 同じテイマーとして尊敬する。


「グ。グッグーグ。グググ。グーグ?」


『ここからは提案なのだが、助けた仲間たちをあなたが故郷に連れて行ってはくれないか?』


「え? 元の草原に?」


「ググーグ、ググ。グーグググ、グーグググッグ。グーググ?」


『いや、違う、あなたの故郷にだ。キブリンキ・サルタスたちから海を渡ったところにあると聞いている。それに興味を持った群れがいるのでな、どうだ?』


 いや、どうだと言われても……。

 勝手に島のモンスターを連れ出すわけにはいかないし、この島の許可が出ても侯爵様の許可をもらえないと連れて行けないし。

 うーん、どうしたものか。

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