487. モンスター牧場にいた闇の座
なんだかんだで歓迎会も終わり、翌日は予定通り一日休みだ。
宿でぶらぶらしているのも性に合わないしモンスター牧場にパルフェとキブリンキ・サルタスたちの様子でも見に行くか。
「アミラ、私はモンスター牧場に行ってみるけど、アミラはどうする?」
「私も行ってみたい!」
アミラが付いてくることもこうして決まった。
モンスター牧場は街の郊外にあるため宿からちょっと離れているのでパルフェ車を使っての移動である。
歩いてもいいんだけど、護衛のことを考えるとパルフェ車を使えと言われてしまった。
本当に偉くなったな、私。
「プラムさん。私ってこれからもあまり歩いて出歩かない方がいいですかね?」
「ん? まあ、キブリンキ・サルタスやロックウルフによって治安が保たれているヴァードモイならばともかく、それ以外の街ではあまり出歩かない方がいいじゃろう。いくら護衛がいるとはいえ、隙がないとは言い切れぬ」
「そうですか。なんだか窮屈だなぁ」
「諦めよ。それだけの影響力を持ったということじゃ」
私、別に偉くなるために動き回っていたわけじゃないんだけどね。
ともかく、パルフェ車に乗ってモンスター牧場に着くと、そこには既に先客がいた。
闇の座のリク様だ。
本当に疲れていないんだろうか?
「リク様、こんにちは」
「ん? リリィ殿か。昨日はゆっくり眠れたか?」
「はい、おかげさまで。リク様こそゆっくりお休みになった方がよろしいのでは?」
「ゆっくり休むにしても預けられているパルフェたちの様子が気になる。そちらを確認しないと休んでもいられんよ」
リク様って仕事熱心なんだなぁ。
それともモンスターを大事にしている人なんだろうか?
両方な気もする。
「それで、リリィ殿たちはなぜここに?」
「私も預けたキブリンキ・サルタスたちやパルフェたちの様子が気になって。元気にしていますか?」
「元気にしているぞ。ほら、あちらで仲良く遊んでいる」
リク様が示す方向を見ると、キブリンキ・サルタスが糸を出してパルフェと綱引きのようなことをやっていた。
でも、キブリンキ・サルタスは5匹がかりなのに対し、パルフェは1匹でキブリンキ・サルタスたちを引っ張っている。
元々の力の差が出ているね。
「しかしながら、珍しいこともあるものだ。昨日も少し話したが、パルフェは慎重で臆病、見慣れないモンスターは警戒する。それなのに、あのキブリンキ・サルタスという蜘蛛のモンスター相手では少し意思疎通を取っただけで気を許している。本当に不思議だ」
「んー、キブリンキ・サルタスたちが温厚なのと、土の匂いみたいなのがするんじゃないでしょうか? 普段は農作業をやっている子たちですから」
「ほう、農作業か。どんなものを作る?」
「私たちの国では気候にあわせて大抵の野菜を作っています。そのほかにも穀物や果実も育てていますね。少しですが、酪農の準備をしている子たちもいます。まだ牛や馬の手配が済んでいないので、環境作りの段階ですが」
「なるほど、酪農か……」
「えっと、なにか?」
「いや、なんでもない。パルフェたちと交流を図るなら、あの蜘蛛たちに橋渡しを頼んだ方がいいだろう。それでは、俺はこれで」
リク様は帰って行ってしまった。
急に帰られたけどなにか用事でも思い出したんだろうか?
忙しい人みたいだし、仕方がないよね。
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