486. 歓迎会 パルフェの状況

 歓迎会が始まってしばらく経つと闇の座のリク様が戻られた。

 少々疲れているように見えるけど大丈夫なんだろうか?


「リク様、大丈夫ですか?」


「ん? ああ、パルフェたちか?」


「いえ、リク様がです」


「俺か。俺は心配ない。少々疲れてはいるが、火の座のように酒を飲み過ぎなければ問題ないだろう」


 どうやら想像以上にタフな人のようだ。

 用意された食事もしっかりと食べているし、こうでなければやっていけないのかもしれない。


「闇の座、パルフェたちの様子はどうだったかね?」


「大きな問題はなかったぞ、土の座。問題となっていた毒草も奥地までは入り込んでいなかった。毒草が入ってきた経路はたどれそうか?」


「少し時間はかかるが問題ないだろう。あれはヤマガラシだ。奥地まで入り込んでいなかったのなら、作為的なものではないね」


「ヤマガラシ?」


 なんだろう、ヤマガラシって。

 八天座の島独特の毒草なんだろうか?


「ヤマガラシとはな、一部の草食性動物やモンスターにのみ毒性がある植物だよ。種が布や毛、羽などにひっつく性質があるせいでときどき群生地以外にひょっこりと生えて害を及ぼす。ヤマガラシとは『山を枯らす』という意味から付いた俗称だね」


 草食性の動物やモンスターが居なくなるせいで生態系が乱れ、山が枯れるということらしい。

 あくまで一部にしか害がなく、それも葉っぱのみが毒性を持ち、実は栄養が豊富なため、ときどき渡り鳥などが実を食べて種を運び被害が出るらしい。

 被害が出ると周囲の草地を一度掘り返して根を焼き払う必要があるそうで、それなりに厄介な代物なんだそうな。

 もちろん、家畜にも影響があるし、今回のようにパルフェにも影響が出るので人里近くでは育っていない。

 人が気付かずに運んだ可能性もあるが、分布状況を調べていけばおおよその発生源は絞れるみたいだ。

 こんな危険な植物が身近にあったら怖いものね。

 しっかり駆除しないと。


「それで、パルフェたちはどうしたんだい?」


「ひとまず牧場に預けてきた。牧場に引っ越してきたら見慣れない蜘蛛たちがいたことに驚いていたが、意思疎通が図れる相手だと知ると興味津々だったな。パルフェは慎重で臆病だが、意外と新しいものが好きだ」


「それが今回の被害の元だろうにね」


「それを言い出してもしょうがない。しかし、いくつかある生息地とはいえ、ひとつが数年間使用できなくなるのは痛い。まったく、自然とは思い通りにいかないものだ」


 自然相手って大変だものね。

 そんな危険な毒草がある地域ならキブリンキ・サルタスたちにも注意してもらわないと。

 あの子たちなら、一度教えれば大丈夫だろうし。

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