485. 歓迎会 食糧事情と外交事情

 宴は進み、今度は大きなエビ料理が出てきた。

 私の頭ほどもあるエビを目の前で焼き、焼き上がった身にタレを付けて食べるんだ。

 このタレがさっぱりしていてエビの甘みをさらに引き立てる。

 本当に見た目も味も豪華な料理である。


「リリィ様、料理はお気に召していただけましたか?」


「キリ様。はい、とても気に入りました。大港で食べたお刺身も美味しかったですよ」


「コウロから聞いていましたが、本当にお刺身も召し上がっていたんですね。外国の方に生魚はあわないかと想像していましたが」


「私は平気です。まあ、一緒にいたみんなは最初食べませんでしたが」


 言われてみれば、生魚なんて躊躇するものだよね。

 マクファーレン公国でも生に近いスライスとかはあるけど、スモークにしてあったり茹でてあったりして本当の生魚は食べないから。

 ここら辺も風習の違いだ。


「失礼。コウロの報告書は読ませてもらったが、本当に生魚を食べていたのですね」


「はい。あの、確か風の座の……」


「フウリです。外交は本来私の持ち分なのですが、外の商人との間の問題が片づいておらず、そちらの国まであいさつに出向けず申し訳ありません」


 フウリ様はキリ様と違った島出身のエルフで、こちらの島出身の一族は外交担当として外国とのやりとりをするのが習わしだったそうだ。

 でも、風の座の一族を通さずに外国に出て騙される商人が多く出てしまい、頭を悩ませていたらしい。

 キリ様は『それならば教育を』と考えついて独断で行動し、私のところへ会いに来たそうだ。

 なんというか、キリ様も手順を踏まないというか。


「お話は光の座と水の座から伺っております。我々の国のために講師と農耕の知識があるモンスターをお貸しいただけるとは、本当に感謝いたします」


「いえ。外に行く商人の教育はともかく、農業ってそこまで深刻なんですか?」


「そうですね、農業水産は水の座の分野なのですが、私もキリが就任したばかりの頃に手伝いをしているので多少は把握しております。いまはそこまで深刻ではないのですが、生産能力が頭打ちになり、開墾できる土地も限られてきたところです。何分、島国ですので土地も水も農業に使える量は限りがあり、いまある畑の収穫量を増やしていくことが今後の課題でした」


「なるほど。ですが、うちの子たちも数年で結果が出せるとは限りませんよ? 島国の気候はまったく知りませんから」


「そこまで短い期間で考えていただかなくとも大丈夫です。……まあ、その分、長い付き合いになってしまうのですが」


 長い付き合いか。

 そうなると、こっちもそれなりの対価をもらわなくちゃいけないよね。

 どうしたものかな。

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