483. 八座神の大神殿にて
その日は連れてきたパルフェとキブリンキ・サルタスたちを、郊外にあるモンスター牧場に預けて宿に泊まった。
群れでモンスターを連れ歩くテイマー向けの牧場が完備されているあたり、八天座の島ではモンスターテイマーはかなり一般的な存在なのかもしれない。
翌日、よそ行きの振袖に着替え、いよいよ八座神の大神殿へ出発する。
メンバーはいつも通りだが、アミラにも振袖を着てもらっている。
アミラの振袖はキブリンキ・サルタスの柄だ。
なかなかかわいくできたと自負している。
アミラも気に入ってくれているし、お姉ちゃんとして満足である。
さて、八座神の大神殿に着いたら、このまま八座の皆さんと顔合わせかと思いきや、先に話をしたい八座の方がいるらしい。
私としては断る理由もないので面会することにした。
「土の座様、リリィ様をお連れしました」
「ああ、入ってもらいな」
案内されたのは八座神の大神殿の外れの方。
最高権威である八座の個室とは思えないような場所にあるんだけど、ここに土の座様がいるらしい。
よくわからないけど、ともかく話を聞いてみよう。
「失礼します。あなたが土の座様ですか?」
「ああ。私が土の座、妖花族のキクリだよ。パルフェたちのこと、私からも礼を言いたくてね」
妖花族。
頭に傘のようなかぶり物を付けていてわからないけど、きっとなにか花が付いているんだろう。
見た目はかなりお婆ちゃんだ。
「そんな。私にできることをしたまでですよ」
「キリやコウロたちに話を聞いた限りじゃ、蜘蛛のモンスターを数百匹テイムしてるんだろう? その上、今回パルフェを数十匹テイムしてきた。体に異変はないかい?」
「異変? ……あんまりないですね」
「なるほど。あんたも得意モンスターと契約する限り、体調を崩すことはないタイプか」
キクリ様に詳しく話を聞くと、一言で『モンスターテイマー』といっても大きく2つのタイプに分かれるようだ。
ひとつ目が『ある程度広い範囲でテイムできるタイプ』で、『鳥系』とか『虫系』とかそういった範囲でテイムできる。
もちろん、その中でも相性があり、契約できたりできなかったりすることがあるけど、経験を積んでいけば相性が悪い相手とも契約できるそうだ。
ただし、このタイプは契約できる数が少なく、あまり数多くのモンスターと契約すると、契約しているモンスターから逆流してくる魔力の流れで体調を崩すらしい。
一般的にはこのタイプなので、テイムできるからといってむやみやたらとテイムすればいいというわけでもないそうだ。
ふたつ目が私みたいな『相性がよい相手ではないと絶対にテイムできないタイプ』だ。
こっちはわかりやすい縛りではなく、意外と複雑な条件を満たす必要がある。
キブリンキ・サルタスがいっていたように、私の場合は『私に友好的なモンスター』だったようだ。
考えてみれば、タラトも最初から友好的だったし、キブリンキ・サルタスたちも契約するときは非常に好意的に受け取ってくれていた。
私の場合は力尽くで相手をねじ伏せても契約できない代わりに、心から友好的な態度を取ってくれる相手なら大抵の相手は契約できるらしい。
そして、このタイプは契約するモンスターの数がいくら増えても、体調を崩すことがないと研究結果が出ているそうだ。
「まあ、いままでの統計上そうなっているってだけなんだがね。契約上限がないとはいえないが、リリィ殿はまだ契約能力に余裕があるじゃろう。無理をしちゃいかんよ」
どうやら、この忠言をするために私と先に面会したかったようだ。
パルフェの生息地に発生していた毒草のことを調べていたのも、土の座であるキクリ様のようだけど、ほかの座にも報告する必要があるのでこの場で説明せず、あとでまとめて説明してくれることとなった。
うん、参考になった。
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