481. 野生のパルフェに起こっていた問題

「グー、グー」


「ええと、こんにちは」


「グー!」


 さすがにモンスターの言葉までは翻訳してくれないか。

 とりあえずあいさつだったことは間違いないようなのでよかった。


『契約主。この者たちはお腹を空かせているみたいだぞ』


「お腹を空かせている? コウロさん、野生のパルフェって草原の草を食べて生活しているんですよね?」


「はい。そう聞いていますが……」


『この草原の草には毒草が混じり始めて食べられなくなったらしい。どこからか毒草の種が運ばれてきて根付いてしまったようだな』


「それって分けて食べることはできないの?」


『見た目ではあまり判別がつかないらしい。口に含んで噛んでみれば、苦みが強く毒草だとわかるのだが、それでも毒の成分は体に取り込まれる。多少ならば問題がなくとも、量が増えれば体の弱いものから死んでいくようだ』


 それは困ったな。

 でも、どうにかする方法ってあるんだろうか?


「グーモ! グーモ!」


『どうやらテイムされてこの場から一度離れたいそうだ。『混沌の渦』はここから離れた場所にあるので、まだ問題になっていないようだが、そちらも時間の問題かもしれないと』


 モンスターだもの生まれてくるのは『混沌の渦』だよね。

 そして、このモンスターは生まれてきた直後だと、あまり体力がないと。

 これって一大事じゃない?


「話はわかったけど、これって八座様にお願いして解決するような問題なんじゃないかな。この子たちって八天座の島でいろいろと手伝ってくれている子たちみたいだし」


『理屈はそうだが、この場で暮らしている者たちにとっては、それも待てないほど急ぎの案件だ。契約主、この者たちをテイムして一度避難させてほしい』


「テイムって……私、蜘蛛以外やったことがないよ?」


『おそらくできるはずだ。契約主の場合、『人間に対して友好的なモンスター』が契約対象だろう』


「そうかなぁ。とりあえず試してみるけど。おいで、パルフェ」


「グー!」


 パルフェ車から降りた私の元に、野生のパルフェが1匹やってくる。

 どうやらテイムの方法を知っているのか、頭に手を置きやすいよう、地面に伏せて額を突き出してきた。

 お利口さんで助かる。


「では契約を……あれ、できた」


「グー!(さすがは主殿!)」


 あ、パルフェの声もなんとなく聞こえるようになった。

 問題となっている毒草の元にも案内してもらったんだけど、普通の草に紛れ込むようにして生えており、これを避けながら食べるのは結構至難の業だ。

 キブリンキ・サルタスが試しに少し食べてみたけど、苦みが強く、少し口が痺れたらしいので毒草なのは間違いない。

 この草原は除染しないと使い物にならないだろう。


 コウロさんとも話し合った結果、この平原にいるパルフェたちは一度私がテイムして連れ出し、その間になんとか解決策を練ることとなった。

 思わぬところで仲間が増えたけど、私って蜘蛛以外もテイムできたんだね……。

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