478. 干し魚のお茶請け
お昼はとてもとても満足した。
最初に出てきた分だけでは物足りなかったので追加注文もしたが、そちらも美味しかった。
季節の魚介盛り合わせを頼んだけど、こっちも大当たりだ。
いまの季節は魚だけではなく貝も豊富でいろいろと盛られていた。
ただ、よく考えると、牡蠣と言われて食べたものがシャキシャキしていたり、アワビと言われて出されたものがとろとろだったりと、前世で聞いたことのある食感とは違う気がする。
まあ、気にしだしてもしょうがないので気にしない。
なお、季節の魚介盛り合わせは私だけじゃなく、アミラやプラムさんたちも食べた。
「美味しかったね。タラトやキブリンキ・サルタスはどうだった?」
『お肉とは違う甘さがあった。塩気も引き立っていたし、僕は好みかな』
『我々はやはり野菜や果物の方がよいな。これはこれでよいものだったが、土の香りのする食べ物の方がいい』
キブリンキ・サルタスは土の香りなんてものを感じながら食べてたのか。
一緒に来たのはアミラの護衛をしている子たちだけだけど、他の子たちへのお土産はいいのかな?
『仲間への土産か。それならば生魚や焼き魚、貝ではなく干物がよいのではなかろうか』
「干物?」
『干物ならば陽の匂いがする。この島独特の魚の味わいも加わって別の土地に来たという土産にはなるのではないか?』
そういうものなのだろうか?
本人たちが言っているのだし、そうしておこう。
干物ということでコウロさんにどこがお勧めか聞いてみると、私たちがこの港に降り立った船着き場から離れた場所に漁船用の船着き場があるらしい。
そちらで漁師たちが捕ってきた魚や養殖している魚や貝を加工し、干物にして販売している一角があるそうだ。
そこに行ってみよう。
「いやあ。あそこに行くのも久しぶりですね。八天座の島にいた頃は大港に来るたび通っていたのですが」
「そんなに美味しい干物があるんですか、コウロさん?」
「ええ。お茶請けにぴったりなものが」
お茶請けにいい干物?
八天座の島もお茶は紅茶系のはずなんだけど、どんな干物なんだろう。
実際に食べてみればわかるということで、コウロさんに案内され干物屋までやってきた。
外から見る限り、普通の干物しか売ってないように見えるんだけど?
「着きましたね。早く入りましょう」
「はい。でも、どんな干物なんです?」
「元はお酒のつまみを目指して開発していた商品らしいんですよ。ですが、いざ作ってみると、ほのかに甘くてお酒のつまみよりお茶請けの方がいいということになり。ともかく、行きましょう」
急かすコウロさんと共に干物屋の中へ入る。
そのお店は私たち全員が入っても大丈夫なほど大きく、品揃えも充実していた。
お店の人に話を聞くと、大港で作っている乾物を一手に引き受けているらしく、このお店に来れば大港で買える干物などはほとんど買えるそうだ。
買えないものは個人商店が開発しているものくらいだとか。
コウロさんがお店の人に注文をすると、お店の奥から一口サイズに切り分けられた赤っぽい乾物を持ってきた。
これが目的のものらしい。
ただ、袋の中身は2種類あって硬そうなのと軟らかそうなのに分かれている。
「コウロさん、これは?」
「ああ、これ。ソフトタイプの干物とハードタイプの干物があるので、それを両方持ってきてもらいました。人によって好みがありますので」
ふむ、好みか。
試しに食べさせてもらったんだけど、確かに干物なのにほんのり甘くてお茶に合いそう。
私はハードタイプが好みだったんだけど、タラトやアミラはソフトタイプが好みだった。
キブリンキ・サルタスたちはどちらもいけるそうなので本当に好みなんだろう。
製法は秘密らしいけど、保存はできるそうなので気に入ったらマクファーレン公国に戻ったあとも輸入していいかもしれない。
……干物なのにお茶に合うって不思議だな。
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