473. 八天座の島、大港島に到着

 船は好天に恵まれ、予定通り3日で八天座の島にたどり着いた。

 船が停泊することになったのは、八天座の島でも『大港島』と呼ばれる外国との連絡口である。

 ここ以外にも八天座の島をぐるっと回った反対側に『外港島』と呼ばれる場所もあるようだが、そちらは大型の船舶を泊めることができないらしい。

 今回使った大型魔道船のような船はすべて大港島に来るそうだ。


 大港島に降り立った私たちは、一旦キリ様やビャク様と別れて宿泊施設に泊まることになった。

 私たちがこちらに来たことを先に報せて歓迎の宴を開いてくれるらしい。

 なんというか、本当に賓客だな。

 ともかく、宿に着いたので私たちも今後についての打ち合わせである。


「ようやく着いたわね。やっぱり、船旅は苦手だわ」


「あれ、プリシラさんって船がだめなんですか?」


「どうしても船酔いするのよ。ヴァードモイ領は交易港も含んだ領地といっても、私の管轄はヴァードモイの都市だけだし、内陸育ちで船とは縁がなかったの。リリィさんたちは平気だったみたいね?」


「まあ、なんとか。それで、これからどうするんですか?」


「そうね、それを先に話しましょうか。2日後にビャク様の使いが迎えに来る予定なので、彼らと一緒に八天座の島の本島である『源島みなもとじま』に渡るわ。そのあと、歓迎の宴が開かれ、宴の2日後に本交渉よ」


「宴の2日後なんですね」


「どうにも宴好きの八座がいるらしくってね。翌日だと二日酔いでふらふらなことがあるから2日後にしているらしいわ」


 なんというか、おおらかな性格の人たちだ。

 私も急かすタイプじゃないからいいけど、せっかちな人とは合わないな。


「本交渉では、まず商人の教育について議題になる予定よ。これについては光の座であるビャク様から直接回答をいただいているので、意思確認だけで終わる予定ね。次が農業に関する提携について。つまり、リリィさんの従魔であるキブリンキ・サルタスたちの貸し出しについてよ」


「あ、私が2番目ですか」


「あちらにとっては商人の問題の次に大きな問題ですもの。こちらについては農業担当の水の座であるキリ様と話がついているわ。あとは治安担当の闇の座様に確認を取ってもらって問題がなければ本決定よ」


 あ、キリ様って農業担当だったんだ。

 通りで農業について食いついてくると思ってた。


 そのあと、魔道具の輸出や工房の誘致やそれに関する費用の取り決め、八天座の島にある商業関係ギルドとの仲介、両国間で貿易する産物の交渉を行うみたいである。

 私はその間にキリ様にお願いされた治水の問題が起きている村で水問題を解決してくればいいらしい。

 難しいことはプリシラさんの方が得意だろうし、任せてしまおう。

 余計な口出しをしてもろくなことがないだろうしね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る