471. 八天座の島へ出発!
すべての準備が整い、いよいよ八天座の島に向かう日となった。
今回は私と護衛のみんなのほかにアミラも同行する。
アミラも普段は学校に通っているわけだが、国外を経験するのも社会経験だと説き伏せて連れてきた。
お姉ちゃんは妹と旅行をしたいのである!
「本当にいいのかな、リリィお姉ちゃん? お姉ちゃんだって遊びにいくわけじゃないんでしょ?」
「そうだね。でも、海の向こうの文化に触れるのはいいことだと思うよ。新しい発想が湧いてくるかもしれないし」
「なるほど。じゃあ、頑張って勉強してくるね!」
アミラもこの3年間で立派な『蜘蛛の綿雲』のデザイナーになった。
どちらかというと子供向けの服を得意としているけど、やっぱり子供向けの服は売れ行きがよくない。
どうしても数年で買い換えとなる子供服にお金をつぎ込める家庭はまだ少ないのだ。
この旅の間にもっといろいろな経験を通じて視点を増やしてほしいね。
「しかし、八天座の島か。儂も初めて行くぞ」
「プラムさんも初めてなんですか?」
「国交はあるが、それほど深い付き合いのない国だ。トップ同士が会うことなどまずないし、せいぜい民間での取引が行われている程度じゃ。軍のトップだった儂が会う理由がない」
なるほど、本当に八天座の島について知っている人はいないのか。
それはそれで困りものである。
船が停泊しているカタスティへ向かうと、八天座の島一行に出迎えられた。
その中にはコウロさんもいて私たちが八天座の島にいる間のガイドを務めてくれるらしい。
いや、本当に助かった。
「ほっほっほ。皆様をお連れするにあたり、最大の問題がありましてな」
「最大の問題?」
「言葉の壁ですよ。八天座の島の言語はこちらの大陸の共通語とは違います。ダーシェ公国もこの大陸の共通語を使っておりますが、八天座の島だけは違うのです。通訳がいないと言葉の壁で詰まってしまいますよ」
ああ、言葉の壁か。
この世界に来てから言葉で困ったことがなかったから気にしてなかった。
よく考えてみれば、世界中で同じ言葉を話している方が不自然だものね。
八天座の島は独自の言語体系を持つのか。
最悪、キブリンキ・サルタスに念話で通訳してもらうこともできるけど、それは本当に最後の手段だね。
そして八天座の島一行と一緒に港へと向かうと、1隻の大型船が停泊している。
コウロさんの説明によると、これが今回八天座の島へ向かうために用意された高速魔道船らしい。
普通の帆船や魔道船の数倍の速さが出せるこの船なら、八天座の島まで3日で到着するそうだ。
逆を言うと、キリ様が帰られてビャク様がやってきたのに2週間しかかかっていない理由がこの魔道船らしい。
八座がふたり同乗するとはいえ、本当に賓客扱いである。
あっちに行ったら託された仕事をきちんとこなさないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます