468. 八天座の島にキブリンキ・サルタスを派遣する条件

 ビャク様と私たちの間で協力条件は決まった。

 あとはキブリンキ・サルタスたちを八天座の島に連れて行くための許可である。

 その許可をもらうため、公都マクファーレンにて公王陛下と謁見だ。


「なるほど。話の内容は事前にヴァードモイ侯爵から送られてきた書簡通りだな」


「はい。八天座の島といたしましては、ご協力いただければ島の特産品である天羊織を献上いたします」


 天羊織とは八天座の島にいる羊の毛で作られた毛織物だそうだ。

 あまり量産できないらしく、こちらの大陸まで滅多に持ち込まれない本当の貴重品である。

 ちなみに、私にもほしいかどうか聞かれたけど断った。

 超高級な毛織物をもらってもあまり使い道がね。


「わかった。リリィも貸し出すのに反対していないのだな?」


「はい。八天座の島で受け入れてくださるのであれば。マクファーレン公国各地の子たちみたいに頻繁なやりとりはできませんけど」


「よかろう。条件付きでキブリンキ・サルタスの貸し出しを認める」


 条件付きか。

 条件ってなんだろう?


「ありがとうございます。それで、条件とは?」


「いや、八天座の島ではなくリリィになのだが、キブリンキ・サルタスを公国内にあるヴァードモイ侯爵派閥以外の地域にも派遣してもらいたい」


 あ、私に対する条件か。

 でも、それってこの3年間ずっと棚上げされていた問題な気がするんだけど。


「いいんですか、公王陛下? 反対派が根強いので認められないとおっしゃっていましたよね」


「他国にも派遣するのだ。反対派などに構ってはおれぬ。まずは私の派閥から派遣してもらいたいが構わないか?」


「そうですね……数が多い方がいいなら秋に新しい子たちを連れてきますが?」


「ふむ。……いや、数もほしいが、先に住民と慣れ親しんでもらうことを優先する。少数でも構わないのでひとまず派遣してもらいたい」


 少数か。

 毎年、巣立つキブリンキ・サルタスの一部は私のところに来ているから結構多いんだよね。

 八天座の島にどれだけ連れて行くかにもよるけど、それに支障が出ないだけの子たちなら問題なさそう。

 ヴァードモイの試験耕作地で働いている子たちは、人の農家とも一緒に働いているし人との生活にも慣れているだろう。

 帰ったら調整してみるとするか。


「わかりました。では、ヴァードモイに戻り次第手配いたします」


「頼んだぞ。……まったく、ヴァードモイの派閥ばかり豊かになるのを見て妬むばかりで自分たちは有効な手立てを打てないとは」


「はは……」


 公王陛下もいろいろと気を揉んでいたようだね。

 国を治めるのも大変そうだ。

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