466. コウロの思惑

 これ以上、キリ様に話を聞いても仕方がないか。

 キリ様の隣でのんびりお茶を飲んでいるコウロさんにちょっと話を聞いてみよう。


「コウロさん。キリ様が教育担当じゃないことは知っていましたか?」


「まあ、うすうすは。ですが、教育担当の八座様より委任を受けて来ていると考えておりましたし、私としては別の教育もほしかったところです」


「別の教育?」


「農業指導ですよ。リリィさんの従魔でしたらお手の物でしょう?」


 まあ、キブリンキ・サルタスたちならある程度できるかもしれない。

 島国みたいだから気候がまったく違うだろうけど、数年で特性を把握できるだろう。

 かといって、なんの見返りもなく貸し出すこともできないし、貸し出すには公王陛下の許可もいるんだよね。

 そこのところはどう考えているんだろうか?


「貸し出しの許可は公王陛下とヴァードモイ侯爵様にお願いするしかありませんな。場合によっては、国の特産品を献上することも考えましょう。リリィさんには、八天座の島でしか生育していない食材を譲るということでいかがでしょうか?」


 なるほど、新しい食材か。

 私としてはそれでも構わない気がする。

 国を、特に海を渡っての食材輸送となると検疫がしっかりしてないといけないが、そっちはこの3年でしっかりと体制を整えた。

 ダーシェ公国から食材を取り寄せるのに必要だったからね。

 それを流用すれば検疫はなんとかなるだろう。

 次は公王陛下たちに献上するという献上品か。

 そっちは私が聞いてもいい物なのかわからないし、あとでプリシラさんと相談してもらおう。

 あと、私がもらえる食材だけど、なにがもらえるのかな?


「そうですね。冷凍輸送の手配をしていただけるのでしたら、八天座の島の一部でしか取れない果物などもご用意いたしましょう。冷凍保存すれば半年は食べられることを確認しております」


 まずは果物か。

 コウロさんがこの国では見かけたことがないと言うし、期待しておこう。

 それ以外にも農作物がいくつか候補に挙がった。

 果物系が豊富で、野菜なんかも甘みが強いものが多いらしい。

 これは期待できそうだ。


 もっとも、これらを入手するには、私がキブリンキ・サルタスたちを貸し出さなきゃいけないんだよね。

 コウロさんとキリ様によれば、公国の作物との取引でもいいと言ってくれているけど、どうせならある程度まとまった量がほしい。

 それならキブリンキ・サルタスを送り込んで土壌改良から始めてもらった方がよさそうだ。

 うまいこと公王陛下を丸め込んでくれないかな?

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