465. 商業ギルドの支援

 おおよその話はまとまった。

 あとは細部を詰める段階である。

 最大の問題はやっぱり契約書を残さないってことなんだよね。

 ここをどうにかしないと先に進めない。

 そこはどうするんだろう?


「そうね。八天座の島にも商業ギルドのような組合組織はあるでしょうし、そこと連携してやっていくしかないかしら」


「そういえば、商業ギルドってこの国にしかないんですか?」


「この国、正確には旧国以外にもあるけど、商業ギルドって国ごとの独自性が強いのよね。それに、提携しているギルドはこの大陸のギルド同士であり、八天座の島のギルドとは関わりがないもの」


 そう言われればそうかもしれない。

 ギルドってあくまでも間に入る組織だから、国同士の関わり合いが弱いと提携していないだろう。

 八座神はあくまでも宗教として伝わってきているだけで、国としてのつながりがあるというわけではないみたいだからね。

 なんだか複雑だなぁ。


「複雑にならず、シンプルに解決する方法ってないものでしょうか? かなり手間暇がかかるような」


「正直、原因ははっきりしているんだけど、根が深いからシンプルな解決方法は無理ね。商人への集中的な教育とギルド同士の交流による不正取引の抑制、これから大人になる子供たちへの教育による意識改革。すべてが必要だわ」


「やっぱり無理ですか。商業ギルドはどこまで力を貸すんですか?」


「商人への教育とギルド間交流までね。次世代の教育は八天座の島独自でやってもらわないと」


 一番難解なところが残ってるなぁ。

 キリ様たちはどうするんだろう?


「キリ様、子供たちへの教育ってそんなに難しいんですか?」


「はっきりと申しますと、私の管轄ではないのです。八座はそれぞれ担当分野が違いますが、教育は光の座の役目でして……」


「あれ? じゃあ、どうして水の座のキリ様が来たんですか?」


「……私の部下であるコウロからリリィ様のお話を聞いていたもので」


 うん、なるほど。

 キリ様のスタンドプレイというやつか。

 これはここでいろいろと決めてもキリ様が帰ったあとひっくり返される可能性も出てきたな。

 いくら同じ八座とはいえ、本来の担当分野外のことを勝手には決められないはずだ。

 ましてや、それが国の今後を決めることになる教育の問題となればなおさらだろう。


 コウロさん、このことを知っていたんだろうか?

 というか、これは一度キリ様に話を持ち帰ってもらってしっかり決めてもらわないとだめなヤツでは?

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