461. ヴァードモイ侯爵様とも相談

 この日の会談はこれで終了。

 後日、ヴァードモイ侯爵様も含め再度会談を行うことになった。

 だけど、やはり学校については性急すぎるという判断のようだね。


「学びの場を増やしたいというのはわかる。だが、増やすにしても、増やしてどうしたいのかがはっきりしないことには人は集まりませんぞ」


「やはりそうですか。ヴァードモイ侯爵様はどのような方法で人を集めているのですか?」


「私がというよりもリリィがですね。話には聞いているようですが、無料の昼食によって育児の負担を減らし、各ギルドから派遣された職人の元で職業訓練を受けさせることにより職人としての技を磨きます。その中には商業ギルドも含まれるので、自然と読み書きの重要性も学べるわけですね」


「なるほど。私どもでもそうすれば……」


「いうほど簡単ではないでしょう。昼食については学校ごとに十分な量の食事を提供しています。それは、リリィが食糧供給網の総元締めであり、あまり気味の食材を安く買える結果でもあるのです。各ギルドから人を派遣してもらうのも簡単ではないでしょう。やはり、物ごとを急ぎすぎですね」


「そうですか……。国の子供たちにもっと広い世界を知ってもらいたかったのですが」


 キリ様によると、キリ様の国家ではあまり外の国とのつながりがなく、閉鎖的な側面があるらしいのだ。

 そのため、勉強を通じて外の世界についてもっと知ってもらい、広い視野を持ってもらいたいというのが本当の狙いらしい。

 ふむ、なるほど。


「ときに、キリとやら。お主、『八天座の島』出身でよいかの?」


 ここまで黙って話を聞いていたプラムさんが、突然キリ様に声をかけた。

 プラムさんの言う『八天座の島』が国の名前なのかな?


「はい。私は八天座の島出身ですが……」


「それならば、儂の出身国であるダーシェ公国と国交があるな。よければ留学生を受け入れるが?」


 留学生か。

 ダーシェ公国に留学へ行ってもらえば、外の世界についても興味を持ってもらえるかもしれない。

 それはそれでありかも。


「それが叶うのでしたら受け入れていただきたいのですが、あなたの一存で決められるのでしょうか?」


「まあ、本国にいるサザビー公王に伺いを立てねばならぬが大丈夫じゃろ。儂の父上でもあるし、国交が変にねじれていると聞いたこともない。お互い、一度持ち帰って相談じゃな」


 キリ様はプラムさんがダーシェ公国の公王を父と呼んだのを聞いて驚いている。

 普通、ダーシェ公国のお姫様が一商人の護衛なんてしないもんね。

 うん、気持ちはよくわかるよ。

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