455. プラファードへ帰還して
私たちは特に問題なくプラファードまで帰還した。
といっても、まっすぐ帰還したわけではなく、いろいろなところをたどり、空から北西部地域の状況を確認してからの帰還である。
「それで、結果はどうだった?」
「はい。きちんと耕作できている地域もあったみたいですが、私たちが調べた範囲では、ほとんどの地域が耕作放棄地となっていたみたいです。少なくとも、数年はまともな収穫を見込めないだろうとキブリンキ・サルタスたちが言っています」
「なるほどな。それでは、北西部地域もこれ以上の戦争をするほど余力はないか」
「だと考えます。ああ、先ほど説明したとおり、新しいレジスタンスのリーダーから手紙を預かっているのでどうぞ」
私はグラフさんから預かっていた手紙を、ヴァードモイ侯爵様とプラファード公爵様に渡す。
その手紙を読んで、ふたりとも苦虫をかみつぶしたような表情となったね。
なにが書いてあるんだろう?
「……さて、どうなさいますかな、プラファード公爵閣下?」
「私としてはこの手紙に書いてあることを飲むしかあるまい。下手に拒否をして戦争となればさらにこの地は荒れ地と化す」
あー、書いてある内容が読めた。
北西部地域を独立国として認めるように、そしてレジスタンスをその地域の支配者として認めるように書いてあったんだな。
でも、レジスタンスが領地運営なんてできるんだろうか?
この世界で領地運営なんて大事な仕事を学んでいるのは、よほど裕福な家か貴族の家系くらいのはずなのに。
ちょっと心配だな。
ヴァードモイ侯爵様に聞いてみるか。
「そうだな。リリィの認識で正しい。領地運営の知識を持っているものはごくわずかだ。それらの者たちが、どれだけレジスタンスに加わっているかがわからない以上、こちらとしても最大の警戒を払わなければいけない」
「また内乱が起こる可能性を考慮してですか?」
「そうなる。政治とは外から見るほど簡単な仕事ではない。それに、この北部地域もそうだが、北西部地域でも冒険者ギルドと商業ギルドが手を引いたままだ。それらのギルドをうまく呼び戻せないと統治体制に不安が生じる。不安が生まれればそれが不満となり、やがては再度の反乱になるだろう。そこはどう考えているのか」
「さすがに、そこまではなんとも……」
「いや、リリィに言ったわけではない。お前に言ってもどうしようもないからな。私たちもクレドリアスとその一派の処刑を見届けた後、急いでマクファーレン公国に帰り公王陛下の判断を仰がねばならないな」
「うーん、また遠征ですか?」
「また遠征だとしてもリリィは外されるだろう。今回こそリリィが直接のターゲットだったので連れてきたが、本来政治に絡むことを一民間人に見せるものではない。最大戦力とはいえ、公王陛下はわきまえてくれるだろう」
まあ、ついてこいと言われない限りついていく気はないけどね。
もう季節は冬に入ってるし、早く帰らないといろいろ問題が発生しちゃう。
ああ、早く帰りたいな。
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