453. レジスタンスのリーダーとお話

「余が新王バリアスである! 頭が高いぞ!」


 顔を会わすなりこれである。

 なんだか、この人には期待できないなぁ。


「バリアス殿、客人の前で失礼な態度は……」


「なにを言うか、グラフ! 残っていた公爵家も滅ぼしてきたのだ。余が新王となることに異を唱えるものなどいないだろう」


「それは……」


「ならば決まりだ。そなたらも、余に本物の第三王子と第四王子、貢ぎ物と旧国各地を不法占拠している者たちへの明け渡し要求の書簡を受け取ったら消え失せよ」


「なっ!?」


「なんだ? もうしたいことでもあるのか?」


 頭にきた!

 各地の勢力が国を治めるためにどれだけ苦労していると思っているの!?

 こんな相手と話なんてできるわけがない!


「ふざけないでください! 私たちはあなたの家臣ではありません! 第三王子と第四王子は引き渡しますが、それ以外は却下です! それから第三王子と第四王子を引き渡すのも条件があります」


「条件だと? 小生意気な。まあ、よい。聞くだけ聞いてやろう」


「第一に第三王子影響圏化から出ないこと。第二にそれ以外の場所にある旧国家とは武力的な方法を含め、統一交渉をしないことです。最後は、この地域の復興に尽力することとなります」


「ふざけるな! なぜ、新王である余が本来の国土を諦めねばならぬ! ましてや、地域の復興など王である余が考えることではない!」


 だめだな、この人には致命的に王様としての器が足りない。

 さて、どうしたものか。


「リリィ殿、少しよろしいだろうか?」


「なんでしょう、グラフさん?」


「君の目から見て、バリアス殿は新王に相応しい人物かな?」


「いえ。まったく相応しくない人物ですね。誰が王になろうと私が後ろ盾になるつもりはありませんが、この人が王になればこの地域はもっと荒れるでしょう」


「……ありがとう。これで決心が固まったよ」


 グラフさんは急に腰に差してあった剣を抜きバリアスさんを椅子ごと串刺しにしてしまった。

 でも、それを見て慌てる兵士は誰もいない。

 これは予定されていた裏切りだったんだろう。

 なんだか、恐ろしいね。


「グラフ……きさ……ま!」


「お別れです、バリアス。各地のレジスタンスをまとめた手腕は買いますが、そのあとがいけなかった。あなたが新しい王になると言い始めた時点で皆の心は遠ざかっていたのですよ」


「こ……の、裏切り、も、の」


「なんとでも呼んでください。レジスタンスの信念を裏切ったあなたこそが、レジスタンスにとっての裏切り者だ」


 グラフさんが剣を引き抜くとバリアスさんは椅子から床に転がり落ちる。

 グラフさんは淡々とバリアスさんの死体を処理するよう警護の兵士に伝え、警護の兵士もそれを淡々とこなしていた。

 やっぱり、この裏切りは予定されていたことだったんだ。

 本当に恐ろしいね。


「さて、利用してしまい申し訳ありません。今後は私がレジスタンスのリーダーを引き継ぐ手筈となっております。血に汚れた談話室では話し合いを続けにくいでしょう。別室で話し合いの続きと参りましょうか」


 うーん、グラフさんも人を殺した後だというのにまったく動じていないなぁ。

 これがレジスタンスとして戦ってきた人の凄みなんだろうか。

 ともかく、この先はグラフさんとの話し合いだね。

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