451. レジスタンスとお話

「部下の不手際申し訳ない。私がこの方面の指揮官、グラフだ」


 あの街壁で威張っていた男を解放して責任者に会わせるよう要求したところ、この人のところまで連れてこられた。

 この人、ただの農民とかには見えないけど、どういう出自の人なんだろう?


「リリィです。今回はレジスタンスの動向を探って帰るつもりだったのですが、途中で第三王子と第四王子を捕まえたため、引き渡しに来ました」


「第三王子と第四王子か。そのふたりなら既にこの街で処刑済みだ。本物なのか?」


「本人たちの申告によれば本物らしいです。あと、私の顔も知っていましたし、私のテイムモンスターが調べても本物だったようですね」


「君の顔を知っている? 君は貴族かなにかか?」


「いえ、違います。ちょっと、去年の冬に王族と会う機会がありまして」


 私の話を聞き、グラフさんは窓の外へと目をやってなにかを考え始めた。

 その背中からは哀愁が感じさせられる。


「リリィといったな。君の力でこの国の復興はできるか?」


「国? 旧国家ですか?」


「そうだ。旧国家を再度ひとつの国家にまとめ上げる。これがレジスタンスの指導者、バリアス殿のお考えだ」


「うーん、無理ですね。見た限り、この北西部一帯もかなり国力が落ちていますし、内戦状態にあった北部と北西部以外は、この約1年でそれぞれ独立国家として力を蓄えています。いまさら、旧国家の統一を掲げても、ほかの諸国から袋だたきにされるだけですよ」


「無能の第三王子と第四王子を旗頭にすえてもか?」


「旧王家に嫌気がさして分裂したんですから余計ですね」


 私がここまで説明し終えると、グラフさんは肩の力を緩め、テーブルの上にあったグラスの水を飲み干した。

 この人も中間管理職ぽいなぁ。


「わかった。旧国家統一は諦めるよう進言しておこう。それよりも、この荒れた北西部地域の復興だ。なにかいい案はないか?」


「案ですか? 北部地域でもそうでしたが、戦争で男手が足りなくなっているのでは?」


「そうだな。無能の第三王子と第四王子は戦に勝った後、北部の男たちを奴隷として連れてくればよい、などと考えていたらしいが、それも叶わぬ夢となった。どうすればいいと思う?」


「うーん、私に聞かれましても。私も本業は仕立て師なので、農業はそこまで詳しくない……というか、ほかの国家の農業にまで手を出したくないんですよ」


「ほう、『ほかの国家』か。自国の農業には手を出していると?」


「私のテイムモンスターが野菜好きで。土地の防衛ついでに畑を耕して作物を作る準備をしています」


「……実に興味深いな。そのテイムモンスター、預けてもらうことは?」


「さすがに別の国までは」


「残念だ。どうせなら、君のような聡明な人間に貴族となってもらいたいものだが」


 最近はすぐに貴族へと推薦されるな。

 いくら頼まれてもやらないけどね!

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