447. 第三王子派閥の動向

 ハニエラさんに複式簿記を教えながら数日が過ぎたある日、急にヴァードモイ侯爵様たちから呼び出される。

 なんでも急ぎで話しておきたいことがあるそうだ。


「リリィ、参りました」


「来たか。とりあえず、座れ」


「はい。でも、急ぎってなんですか?」


「第三王子派閥の北西部の話だ。ついにレジスタンスが蜂起したらしい」


 え!?

 ついに革命が始まったの!?


 私は慌てて椅子に座り、話の続きを待つ。

 この話はどの陣営にとっても大きな意味を持つ話となるからだ。


「よし、では情報の整理を始めよう。私のところにレジスタンスが大々的な行動を起こしたという情報が入ったのがつい先ほど。その情報を入手したのはおよそ10日前だそうだ。つまり、レジスタンスの行動開始から、既に10日が過ぎている」


「10日ですか。プラファード公爵様、どの程度の状況がわかっているでしょう?」


「十分な準備をしてからの一斉蜂起だったようなのでな。おそらく、ほとんどの都市で勝敗はついているだろう。問題は、それが我々にとって好ましい結果かどうかだな」


 私たちにとって好ましい結果か……。

 プラファード公爵いわく、レジスタンス側が大勝しても困るし、第三王子たちが生き残られても困るそうだ。

 レジスタンスが勝ちすぎれば、その勢いのまま近くの国に侵略を始める可能性もある。

 第三王子と第四王子、およびそれを支持する公爵家の人間が生き残れば戦争は終わらない。

 レジスタンス側には要人の抹殺だけは確実にしてもらい、ほかはそこそこ負けてほしいというのが実情のようだ。


「それで、プラファード公爵閣下。入ってきた情報だと、レジスタンス側はどうなったのですかな?」


「国境沿いの砦の情報しか入ってきてはいないが、砦の占拠に成功したようだ。ほかの情報はまだ入ってきていない」


「国境砦を落とされているとなると、それ以上の情報を収集するのは難しいでしょうな」


「ああ、そうなる。密偵を放ってはいるようだが、守りの薄い山岳部を経由した調査だ。結果が出るまでしばらく時間がかかるだろう」


 うーん、諜報戦って時間がかかるよね。

 私のキブリンキ・サルタスたちやプラムさんの部下が、この国では異常なだけであって基準にはならないもの。

 私に頼られても困るから、頼られても断るし、プラファード公爵様たちも頼るつもりがないみたい。

 でも、レジスタンスがどう動いているのかは私も気になるなぁ。

 どうしたものか。

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