444. 北部の今後

 やがて会食も終わり、いよいよ本格的な話し合いが始まる。

 プラファードも含めた北部地方の今後についてだ。

 コリニアスが好き放題やっていたおかげで、北部方面の国力というか蓄えというか、とにかく、余裕はほぼなくなっている。

 特に、兵士として強制動員され、結果帰らぬ人となった者たちが多い。

 そして、そういう人たちの多くは働き盛りの男手だった。

 そこの穴埋めをしないと、国力回復も望めない。

 だからといって、ほかの国から連れてくることも、ねぇ。


「確かに、働き手の、特に農村部の働き手の不足は深刻だろうな。なんだかんだ言っても女子供や老人だけで畑を維持するのは難しい。それに、国が荒れている現状、野盗の類いもはびこるだろう。そこをどうにかせねば」


「どうにかできるんですか? ヴァードモイ侯爵様」


「途中で解放してきた捕虜たちも、一般兵の多くは農村などから徴兵された兵士だろう。彼らが暮らしていた村まで戻ってくれるのが一番よいのだが」


 そういう事情があったのか。

 それなら、その村の近くまで行って解放したのに。

 ああ、でも、そんな寄り道をしているほど暇でもなかったか。


「男手の不足は深刻だな。ヴァードモイ侯爵、人を派遣してもらうことはできぬか?」


「プラファード公爵閣下の頼みとはいえ、頷くことができかねます。人は我が領地にとっても宝ですし、マクファーレン公国としても、戦争状態が落ち着いたばかりの地域に人を送ることは難しいでしょう」


「やはりか。つくづくあの馬鹿王弟の施策が邪魔になるな」


 うーん、復興の道筋はあまり明るくなさそう。

 なにか、支援できることはないかな?


 ああ、そういえば、プラファード公爵を助けることになった理由、メルト子爵のことをすっかり忘れていた。

 でも、忘れていたのは私だけで、メルト子爵の引き渡しについてヴァードモイ侯爵様とプラファード公爵の間で話はついているようだった。

 ほかの貴族はどうするんだろうか?

 一応、連れてきているんだけど。


「ほかの貴族か。モロガワードも含め、あまり必要のない貴族だな。メルト子爵以外はコリニアス一派だ」


「それでは、彼らはコリニアスとともに処刑ですね」


「それで構わぬ。わざわざ連行してきてもらったのにすまぬな」


「いえ。これで問題は男手の不足と、この先空白になる領地を誰が治めるかですね」


「そうだな。男手の不足は……まあ、私の方でなんとか考えてみよう。問題は、親コリニアス派だった貴族たちを追いだしたあとの領地を誰が治めるか、だ。今回は武勲を挙げた者がいるわけでもないし、むしろ攻め込まれた恰好だ。適任者がいればいいのだが」


 ……なんで、視線が私の方を向いているかな?

 私は絶対に貴族になんてなりませんよ?

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