443. プラファード公爵邸にて

 今回の元凶、コリニアスは捕まった。

 コリニアスは、プラファードの監獄最下層の独房につながれている。

 ついでにタラトの氷と糸でも動きを阻害しているので、協力者が逃がそうとしてもほぼ不可能だろう。

 コリニアスについてはこれくらいだ。


 私の方はというと、振袖を着てヴァードモイ侯爵様とともにプラファード公爵夫妻と会食をしている。

 まだ、本題には入っていないけど、今回の件の責任はすべてコリニアスとその派閥の貴族に負わせてしまおうというシナリオらしい。

 貴族って怖い。


「……それにしても、リリィ殿の着ているドレス。『フリソデ』でしたかな。実に美しい」


「ありがとうございます。でも、作るのが大変で量産もできないんですが」


「それほどのものなら当然でしょう。それから、リリィ殿。妻や子供たちを助けていただき、まことに感謝しております」


「いえ。でも、この先、北部の運営は大丈夫なんですか? コリニアスに積極的に従っていた貴族もいるのでは?」


「彼らには降伏するか戦うかの質問状を送りつけました。実際に戦となれば、コリニアスがその権力で兵力の大部分を集めていたプラファードには勝てません。まあ、降伏してくるでしょうね」


 降伏かぁ。

 こういうときって降伏したらどうなるんだろう。

 そこのところも聞いてみると、家を取り潰し、私財を没収した上で国外追放だという。

 厳しいね。


「国内に残しておけば反乱の芽となりかねませんからな。降伏しなければ、家族もろとも処刑。どちらがよいかはその貴族次第でしょう」


 勝ち目のない戦いに挑むか、国外追放を受け入れるか、どっちもつらい選択肢である。

 うーん、ヴァードモイ侯爵家が負けなくてよかった。


「……リリィ、お前がそれを言うのか?」


「どうしてですか、ヴァードモイ侯爵様?」


「今回の戦、ほとんどリリィだけで勝ったようなものだぞ? 確かにヴァードモイとしても兵は出したが、そのほとんどは囮と護衛で、肝心要なところはすべてお前が持っていったではないか」


 あー、確かにそうかも。

 ヴァードモイ防衛戦ではタラトとキブリンキ・サルタスたちでほぼ決着がついていたし、プラファードの街に来るまでの砦とかもタラトが落としていった。

 そう考えると、私がほとんどやってしまっているのか。


 あれ、これってまずいことでは?


「ヴァードモイ侯爵様、これって大丈夫なんですか?」


「大丈夫、とは?」


「戦争ってどれだけ功績を収めたかで褒美をもらえたりしますよね?」


「そうだな。今回はほとんどの褒美をお前に与えることになるな」


「それって、まずいんじゃ?」


「そう思うなら、お前からも同行した兵士たちを労う用意をしておけ」


 労う用意か……。

 ヴァードモイの街に帰ったら慰労会でもしようかな。

 よし、そうしよう。

 それが一番だよね。

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