442. コリニアス
私たちはコリニアスが立て籠もったという部屋の前までやってきた。
そこはすでにヴァードモイ侯爵家の兵士に取り囲まれており、逃げ出す隙間はない。
コリニアスの兵士だったであろう者たちは、既に無力化され廊下の隅に転がされていた。
こればかりは自分の付いた陣営を恨んでもらいたいね。
「ここか? コリニアスがいるという場所は?」
「はい。ですが、内側から鍵をかけられ、内部に入れません。いかがいたしましょう?」
「扉は壊せないのか?」
「かなり頑丈な扉のようで、ハンマーを使い殴っても傷がつきません。また、魔法で攻撃しても同様です」
「なるほど。ここに来て大きな障害が出たな」
この中に入れないか、それは困った。
うーん、どうすればいいんだろう?
「リリィ、タラトの魔力で凍らせて砕くことはできぬか?」
「ええと、やってみないとわかりませんが、やってみますか?」
「頼む。ここで時間をかけたくない」
「わかりました。タラト、お願いね」
『わかった。扉とその周囲を凍らせてみるね!』
タラトが糸を飛ばして扉の周りを固めた。
すると、糸が凍りついていき、周囲の壁も一緒になって氷に変わってしまう。
そのあと、タラトが再度糸をぶつけると、氷が砕け散った。
結果、扉より先に壁が砕け、扉が部屋の方へと倒れていき、床にぶつかった衝撃で砕け散った。
……まあ、結果オーライかな。
「な、なんだ? 扉が凍りついて崩れただと?」
「予定とは違ったが、まあよい。久しぶりですね、コリニアス王弟」
「貴様! ヴァードモイ侯爵!」
「はい。あなたとの賠償交渉が決裂したため、直接請求に来ましたが、先に手を出されてしまったので武力制圧に変更させていただきました」
「くっ……こんなことをしてただですむと思っているのか!?」
「思っていますよ。旧王家には、もう威信も実力もない。あなたと第三王子たちが権力争いをしている間に、独立の道を歩んだ各地方は国家として十分な力をつけました。いまさら、あなた方がどうあがいても旧国家の統一など起こりえない」
「たわけたことを言うな! 私こそが王だ! 王に刃向かう愚か者どもは、偽の王である第三王子を始末した後、すべて縛り首にする!」
「そんな寝言がこの状況でもまだ言えますか。既にあなたは包囲され、逃げ場はなし。あなたのことを守る兵士もごくわずか。大人しく投降すれば、この場で命は取らないと保証しましょう。あなたが虐げてきた者たちが、あなたをどう裁くかまでは責任を負いかねますが」
コリニアスはまだ諦めていないみたい。
プラファード公爵が味方だと思っているからかな?
ここからどう動くんだろう?
「こうなれば、我が王家の秘宝にてお前とその軍を討ち滅ぼしてくれる!」
「王家の秘宝? 聞いたことがありませんが、そのような物が?」
「聞いて驚け! この杖は……」
「ただの宝飾品ですよ、コリニアス王弟」
「なんだと!? プラファード、貴様、なんと無礼な!?」
「いえ、これ以上演技を続けるのも億劫になってきましたものでな。コリニアス、ここで捕縛させてもらう」
「なにを世迷い言を! 貴様が裏切れば貴様の家族は……」
「もう救出済みですよ。ほかの貴族家の方々とともにね」
「なっ……!?」
「それでは、次は当家自慢の独房内にて目をお覚ましください」
あ、プラファード公爵がコリニアスを思い切り殴り飛ばした。
いい角度で拳が入ったなぁ。
それに金属のガントレットをつけてのパンチって相当痛いんじゃないだろうか。
吹き飛ばされたコリニアスは立ち上がってこないし。
コリニアスはそのままヴァードモイ侯爵家の兵士によって捕らえられ、残りの兵士も投降した。
これで完全勝利ってわけだ。
あとは事後処理をして帰るだけだね。
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