441. コリニアスの屋敷
キブリンキ・サルタスの案内でプラファードの街をすいすい進む。
結構入り組んだ街並みだけど、屋根の上から行き先を指示してくれるおかげで迷わずにすむんだよね。
いや、優秀だ。
『そろそろコリニアスとかいう男の屋敷に着く。準備はいいか?』
「わかった。総員、戦闘準備!」
全員が剣を抜き、いつでも戦えるように体制を整えた。
さて、ここからどうでるかな?
「……あれが、コリニアスの屋敷?」
『そうだ。だが、随分と静かだな。なにかあったのか?』
「それを私に聞かれても」
この状況は案内役のキブリンキ・サルタスでも想像していなかったらしい。
どうしよう、突入するべきなんだろうか?
「……待て、リリィ。どうやら、儂の手の者が入り口を制圧しておいたようじゃ」
「え、もうですか?」
「人質の救出が終わり、そちらはプラファード公爵の手によって安全な場所に移されたそうじゃ。それで手の空いた者たちが入り口を制圧したようじゃな」
「そんな、もののついでみたいに……」
「儂の部下にキブリンキ・サルタスたちもおるのだぞ? 制圧などもののついでだろう」
「……それもそうですね」
こう言っちゃなんだけど、人の兵士なんて相手じゃないかも。
救出作戦の指揮を執っていたプラファード公爵から、この屋敷の警備はコリニアスの直属兵しかいないと聞いていたそうで、なんの遠慮もなく倒したそうだ。
倒したといっても殺してはおらず、気絶させただけらしいが。
この辺も戦力差だよねぇ。
「ともかく、もう安全なんですね、プラム殿?」
「ああ、安全じゃ。一気になだれ込むとよい」
「わかりました。全軍、突撃!」
ヴァードモイ侯爵様の合図で、兵士たちが一気にコリニアスの屋敷に突入する。
門も開け放たれていた屋敷は、入り口を守っていた兵士が気絶して蜘蛛糸でぐるぐる巻きにして放置してある。
本当に制圧済みだった。
で、残っていたのは、キブリンキ・サルタスが1匹だけ。
残りのメンバーは屋敷の中も制圧に行ったらしい。
本当に早いな!
「これではプラム殿の配下とキブリンキ・サルタスたちだけに手柄を取られてしまうな。損害が出ないのは好ましいが、戦争としてはあまりよろしくない。総員、急いで内部に入り王弟配下の兵士を無力化せよ!」
兵士たちはヴァードモイ侯爵様の護衛数名を除いて屋敷に入っていった。
私たちは屋敷の安全が確認されるまで、タラトの氷で作られた臨時本部で待機だ。
この中なら魔法だろうと矢だろうと安全だからね。
「うーむ、今回は本当にリリィの戦力に頼りきりだな」
「気にしないでください。今回は私も狙われているので」
「今回の件で、リリィがいる限りヴァードモイに手を出そうとする輩はいなくなるだろう。礼を言うぞ、リリィ」
「いえ。私たちの安寧のためでもありますから」
正直、私個人を狙われる分にはタラトが常にそばにいるのであまり脅威ではない。
問題はアミラが狙われたときだ。
アミラの周りにもキブリンキ・サルタスたちがいるので、手を出すのは容易ではないが、どうしてもタラトよりは弱い。
そこをつかれたくはないのである。
それを防ぐには、私に手を出したら恐ろしいと一回知らしめるのが一番早いわけで。
コリニアスはいい生贄となってくれたともいえる。
うん、順調すぎるくらい順調である。
しばらく氷の部屋の中で待っていると、屋敷の中から兵士がやってきた。
どうやら最後の詰めを残すだけの状況まで来たらしい。
「ヴァードモイ侯爵閣下。コリニアスを追い詰めました。やつは現在、応接室に立て籠もっております」
「応接室に? 隠し扉などはないのか?」
「あるようですが、そちらはキブリンキ・サルタスによって閉ざされている模様。逃げ出す恐れはありません」
本当に最後の詰めだった。
キブリンキ・サルタスたち、隠し通路とかをすべて塞いだ応接室に追い立てたな?
「わかった。最後は私直々に指揮を執ろう」
「はい。あちらにはプラファード公爵もいるようです。人質を解放されている以上、コリニアスに従う理由などないはずですが、お気をつけください」
プラファード公爵も間に合ったんだね。
さて、本当の大詰めだ。
ここで取り逃がさないようにしなくちゃ。
……いや、キブリンキ・サルタスたちの包囲網を抜けるとか、無理だな。
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