428. 国を正常化する方法
「うーん。戦を収める方法ってないんですかね?」
この際だ、このおふたりの意見も聞いてみよう。
なにかいいアイディアを持っているかもしれない。
「正直に言えば難しい。王弟一派も第三王子一派も矛を収めるつもりは、まったくないだろうからな」
「最大の問題はそこだ。戦争を早期終結させたいのであれば、両国の主戦派をまとめて黙らせる必要がある。リリィならそれも可能だろうが……」
「それをやると、私の仕業だって間違いなくばれるので、次の目標がヴァードモイに定まってしまうんですよね?」
「そうなる。早まった真似はしてくれるなよ」
さすがにそれくらいは私でもわかる。
でも、そうなると、戦争を収める手立てがないってことになるんだよね。
どうしたものか。
「あ。いまの国境線、というか、王弟派と第三王子派の境界線ってどうなっているのでしょう?」
「ふむ。私も詳しく調べたわけではないが、旧国の貴族領地沿いに戦力が集中して動いていないと聞く。どちらも、相手の領域に踏み入ることができていない状況だな」
「なるほど。ヴァードモイ侯爵様、それなら、タラトで国境線を凍らせませんか?」
「お前にしては悪くない案だが、却下だ。氷のない範囲を探して戦力を動かすだけになる。戦争を終結させる一手としては足りない」
うーん、だめか。
私が直接手を貸せる範囲で戦争を終結できそうな手は……あれはどうだろう?
「では、王弟派閥だけでも資金力を偏らせるというのは?」
「なに?」
「メルト子爵です。あの人の領地って少数ですがマナシルクスパイダーがいるんですよね? 私がマナシルクスパイダーと話をしてうまくいけばマナスパイダーシルクの増産ができると思うんですよ」
「……なるほど、ヴァードモイからの輸入が止まっているスパイダーシルクを国内で生産させて経済を回すか」
「はい。それに、この状況でそんな高価な品を買える人って大商人や貴族だけですよね? そこから巻き上げた金を使い、なにか政策を打ってもらうとか」
「本当に、お前としては悪くない考えだ。そのためにも、メルト子爵をこちら側に引き入れる必要があるな」
「そうですね。そこはヴァードモイ侯爵様に任せても大丈夫でしょうか?」
「お前に貴族同士のやりとりができるなど思わん。そこは私に任せろ。ロベラウド公爵閣下も構いませんか?」
「そうだな。メルト子爵が今回の侵略に加わっていると聞いたときは驚いたものだったが、こちら側に引き入れることができるのであればまたとないチャンスだ。あとは、第三王子派閥を切り崩す方法だが、そちらは私の方で探っておこう。力は借りることになるかも知れぬがな」
「ありがとうございます、ロベラウド公爵閣下」
よし、ひとまずの方針は決まりだね。
あとはメルト子爵って人をこちら側に引き込めば作戦をはじめられるのか。
いい人らしいからなんとかできないかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます