427. ロベラウド公爵家の縁談と北の状況について

 さすがにコードル様の暴走は、ロベラウド公爵様とヴァードモイ侯爵様の耳にも入ったらしく、急遽応接間で面会となった。

 ロベラウド公爵様は平謝りだ。


「申し訳ない、リリィ殿。息子が迷惑をかけた」


「いえ。それよりも、あの調子で大丈夫なんですか?」


「大丈夫ではないな。ひとまず謹慎を命じておいたが、その間に頭を冷やしてくれるかどうか……」


「そこまで重症なのですかな、ロベラウド公爵閣下」


 状況の説明しか受けていないヴァードモイ侯爵様が、ものすごく不思議そうにしている。

 まあ、あの場にいなければ異常さなんてわからないよねぇ。


「ぞっこんだった相手との縁談が破綻になって以降、年頃の女性を見つけるとすぐに声をかけてしまってな。平民相手に求婚を無理矢理迫れば、貴族の権力を振るったと噂が立つ。ほかの貴族との求婚ならば、どこかの国に肩入れすることになる。中立を掲げるヴィンラウドの貴族だからこそ動きが取れないのだよ」


「それは……。なんというか、お気の毒に」


「いや。国が割れた結果、破綻した縁組みや敵味方に分かれた親族など数多くいる。場所によっては、戦意昂揚のため敵地から嫁いできた娘とその子供たちを処刑したところもあるそうだ」


 それはひどい……。

 そんなことまでしていたの?


「すべて戦争が悪いといえばそれまでなのだが、ヴィンラウドより北の地では様々な方面で影を落としている。男手を兵に取られ、放棄された耕作地や野盗から身を守れなかった村などもある。王弟と第三王子の権力争いが収まれば、ある程度は穏やかになるのだろうが、それもいまは難しいだろうな」


「そこまで仲が悪いんですか、そのふたりって」


「お互い引けぬところまで来てしまったのだよ。大量の兵と食糧をつぎ込んだ結果、旧国家北部方面だけ一気に貧しくなった。金は東部と西部にできた国家へと流れ込み、それぞれの支配地域は衰える一方だ。ここで相手を打ち負かし、自分の正当性を主張した上で反逆者として相手の領土の財を巻き上げるしか復興の道がない」


 うーん、たった1年でそこまで追い込まれたか。

 北部に一番近い街とはいえ、南部国家にいた私には遠い世界の話だったんだな。

 さて、そうなると、どうすればその状況を打開できるんだろう?


「リリィ、なにを考えている?」


「いえ、この状況から一般市民を救う方法がないかと」


「一般市民を救う方法か。それには、まず王弟と第三王子、それから戦争賛成派の貴族すべての首を狩らねばならないな。為政者が戦争を望む限り戦争は終わらない」


 それぞれの派閥の主要人物を抹殺するのか……。

 タラトなら簡単だろうし、ヴァードモイ侯爵様もそれは承知しているはず。

 その方法を提案してこないということは、使わない方がいいということなんだろうね。

 さて、どうしたものか。

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