424. 王弟からの返事待ち
会食から1週間が過ぎた。
その間も、私はヴァードモイ侯爵様やロベラウド公爵様と今後のことを話したり、ロベラウド公爵様の奥様やお嬢さんたちとお茶会をしたりと結構忙しく日々を過ごしている。
いや、本当に忙しいんだな、これが。
ヴァードモイ侯爵様からは、私が個人的にもらう賠償も考えておけと言われているし、本当にいろいろと忙しい。
それにしても、私個人の賠償というのはどういうものがいいだろう?
「プラムさん。私がもらうような賠償ってなにがありますかね?」
「うむ……お主の場合、ほとんど事足りているからな。北の地で出回っているという、マナスパイダーシルクを取り上げる意味もなかろう」
「はい。そんなことをするよりも、量産した方が早いんですよね。いまとなっては」
「かといって、金銭的な賠償を求めるのもなんじゃし……とりあえず、妾の方でも考えておく」
「よろしくお願いします」
賠償問題は棚上げ。
とりあえず、王弟からの返事待ちである。
返事を待っている間、なにもすることがないので、作業部屋を1室借りて、のんびり裁縫作業をすることにした。
お題は『上のお嬢様が着る振袖』だ。
身長や手の長さなどは、すでに測らせていただいたので作業を進めていく上で問題になることはない。
サクサク型紙を描いていくだけだ。
おおよその型紙ができあがったところで、一度上のお嬢様に会いにいく。
どんな刺繍を入れるかを確認しに行くのだ。
私は春夏秋冬で4パターン作るつもりだけど、今回はそうもいかないだろうからね。
「フリソデの絵柄でございますか?」
「はい。具体的なものでなくても構いません。どのようなものがお望みでしょう?」
「そうですね……リリィ様があのドレスをお召しになっていたとき、すさまじい気品を感じました。そういった気品を感じさせる柄がいいのですが、どんなものがあるでしょう?」
気品か……どんなパターンがあったかな。
私はいろいろな柄をメモ書きしたノートを見せることにした。
そこには、単純に花を幾重にもあしらったものから雲の象徴をあしらったもの、古典的な紋様から比較的カジュアルなものまで多種多様なパターンが描かれている。
さすがにこれには、目をぱちくりさせるしかなかったようだ。
「あ、あの。これらをすべてできますの?」
「はい。複雑さによっていただくお時間も変わりますが、大体のオーダーには答えられます。すぐに決めなくても構いませんので、じっくりとお選びください」
「は、はい。あの、このノートをお預かりすることは……」
「できますよ。同じものをもう1冊持っているので大丈夫です。できれば、妹君にも確認していただいてください」
「わ、わかりました。それでは、また……」
振袖の柄があんなに多かったとは思わなかったんだろうな。
あれだけの量があるからこそのあの値段なのに。
……あれ、ひょっとして、私、また値付けに失敗している?
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