420. 会食後のお茶の席

 会食は和やかなムードで進み、そのまま食後のお茶へと移動した。

 振袖で紅茶というのもなんだか異国感があるな。

 あ、結構美味しい。


「それで、ヴァードモイ侯爵としてはどこを落とし所とするのだ?」


 お茶を一口飲んだあと、ロベラウド公爵様が切り出す。

 そこのところは私も知りたい。

 一般兵の捕虜は全員解放するし将校クラスについても大体話し合ってはいるけど、侵略された結果としての賠償金などは貴族同士で考えればいいことだと思っていたので口を挟まなかった。

 どこを落とし所とするんだろう?


「公王陛下とも連絡を取り合い決めてあります。具体的な量は教えられませんが、金銭的な解決ではなく物品での解決を求めます。具体的には、魔法金属などで」


「魔法金属か。そういえば、王弟配下の領土には魔法金属が多く産出されるダンジョンがあったな」


「はい。そこで産出される金属を解決のための対価として求めたいと考えています」


 なるほど、魔法金属ね。

 私にはあまり馴染みがないけど、ヴァードモイの近くでは手に入りにくいそうだから貴重品だと思う。

 公王様も賛成しているということは、国としてもあまり手に入らないのかな?

 どちらにせよ、お金ではないらしい。


「しかし、魔法金属を要求してあの方が要求を飲むのか? 王弟と第三王子たちはまだ後継者争いの決着をつけていない。強力な武具の材料になる魔法金属をそう簡単に手放すとは考えられないのだが」


「それは大丈夫でしょう。王弟の土地には優れた鍛冶師がいないため、大量の魔法金属が塩漬けになってると調べがついています。それを要求します」


「ほう。だが、そう簡単に渡すとは限らんぞ」


「それは大丈夫でしょう。先ほど公爵閣下もおっしゃっていたとおり、王弟は第三王子派閥との戦争をまだ終えておりません。王弟としては、ヴァードモイを足がかりに公国を吸収して勢力を拡大したかったのでしょうが、その目論見は潰えました。公国からの宣戦布告を避けるためにも多少の身銭は切るでしょう」


 これって王弟派閥が賠償に反対したら、公国も王弟派閥に攻め込むってことかな?

 でも、公国にとって王弟派閥の土地はあまり魅力のない地域だとアリゼさんから聞いた記憶がある。

 つまり、ポーズだけ見せて攻め込むことはしないということなんだろうか。

 うん、わからないな。


 私が前線まで戦争で攻めていくタイプじゃないのはヴァードモイ侯爵様も知っているだろうし、ここは任せておこう。

 貴族同士のやりとりは私には難しいからね……。

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