419. ロベラウド公爵と会食
一通り今後のことを話し終えると、一旦その場はお開きとなった。
このあとの予定は会食である。
正装で参加しなければならないため、私は振袖を着ることになるわけだ。
そして、今回は時間もあるため髪も結い上げる。
これがまたなかなか大変だったりする。
結い上げ方は教えてあるのでお任せだけど、じっとしているのもつらい。
本当にお任せなんだけど、つらい。
髪のセットまで終わったらヴァードモイ侯爵様と合流して夕食会の会場に向かうのだが、私を見たヴァードモイ侯爵様が変な顔をしている。
どうしたのかな?
「ヴァードモイ侯爵様、どうしましたか?」
「いや。リリィ、お前、そんな姿もできたのだな」
失礼な!
私だって着飾ることはできる!
……でも、普段は絶対にやらないな。
動きやすさ重視の服しか着ないから、動きが制限されるタイプのドレスは絶対に着ない。
髪だって長時間セットするのは大変だから、ある程度まとめて終わりである。
よし、ヴァードモイ侯爵様の言っていることはあっている。
悔しいが、あっている。
「まあ、できます。苦手ですけど」
「そんな気はするな。普段のお前を見ていると、コウ以上にドレスというものが苦手なのは理解できる。身分的に淑女として生きる必要はなかったのだろうし、仕方のないことなのだろう。だが、この先はそうも言ってられなくなるぞ」
「そうですよねぇ。そこについては頑張って勉強していきます」
「うむ。お前のところにはプラム殿もいることだし、礼儀作法の指導を受けるのは問題ないだろう。さて、ロベラウド公爵の驚いた顔を見にいくか」
私を珍獣扱いして!
でも、普段からすると珍獣なのも仕方がないので黙っておく。
珍獣みたいなのは自覚してるし。
ヴァードモイ侯爵様にエスコートされて夕食会の会場に着くと、ロベラウド公爵様と女性がふたり、それから男性が3人と女の子がふたり、合計8人が待っていた。
ロベラウド公爵様の家族かな?
「……ヴァードモイ侯爵、となりにいる女性はリリィ殿か?」
「そうです。私も見たときは驚きましたが」
「……いや、本当に驚いた。はつらつとした少女とした印象だったのに、いまは妖艶ささえうかがえる。それにそのドレス。なんと見事な刺繍と染め物だ」
「胴の部分だけではございませんよ。リリィ、袖を広げて見せよ」
「はい」
私は袖を広げて振袖の柄がすべて繋がって見えるようにする。
これには美しい絵画などを見慣れてきただろう公爵家の方々も驚きを隠せていないね。
よし、これはいけそうだ。
「なんと素晴らしい! その豊かな袖まで使い、ひとつの絵画となっていようとは! ヴァードモイ侯爵、どこでそのようなドレスを手に入れた?」
「私が手に入れたのではありません。リリィが自分で作り出したものです。リリィは本来服飾士であり衣服を作るのが専門です。このドレスもリリィの故郷のドレスで、『振袖』というそうですよ」
「フリソデか! なんとも豪華な衣装だな!」
うん、インパクトは十分みたいだね。
振袖を作った甲斐があった。
さて、会食ではどんな話題が出るかな?
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