418. ロベラウド公爵と会談

「お久しぶりです、ロベラウド公爵閣下」


「はじめまして、ロベラウド公爵様。リリィと申します」


「うむ。立ち話もなんだ、座りたまえ」


 ロベラウド公爵様はソファに腰を下ろす。

 そのときの音でなんとなくわかったけど、かなりいい体格をしているみたいだ。

 太っているわけではなくて体がしっかり鍛えられているのだろう。

 そんな感じの音がした。

 やっぱり、この方も主なき街を治めている貴族である。


「では失礼いたします。それで、今回の用件なのですが、以前の書簡でも送ったとおり、王弟との間で起きた紛争解決に協力していただきたいのです」


「わかっている、ヴァードモイ侯爵。聞けば、数千の兵がこのヴィンラウドの守りをすり抜けてヴァードモイに行ったそうだな。さすがにその不手際を認めないわけにも行くまい。心からお詫びしよう」


「いえ、滅相もない。結果としてヴァードモイにはなんの被害も出ていないのですから、あまり気に病まれずに」


「そう、それだ。数千の兵がヴァードモイを攻めたはずなのに、それらの兵がすべて捕らえられたと聞く。しかも、ヴァードモイの兵士たちには怪我人がいなかったそうだな。一体どんなカラクリを使った?」


「リリィの従魔たちに手伝ってもらいました。今回はリリィもターゲットだったため、協力を願うのにためらうことなくできて助かりましたよ」


「ほう、その少女がな」


 私の方に視線がきた。

 ものすごく鋭い視線である。

 この手のものにも慣れてきているからひるみはしないけど、本当に鋭い眼光だ。

 きっといままでも数々の困難をくぐり抜けてきた、そんな目つきだな。


「ふむ、動じぬか」


「最近は慣れてきました。それよりも、あまり挑発するような真似はやめてくださいね? プラムさんたち人の護衛はともかく、従魔のタラトが動くと厄介ですから」


「従魔? そういえば、従魔という話が出てきたが、その従魔は連れてきていないのか?」


「いますよ。いまは天井に」


 私の言葉を受けて、はっとなったようにロベラウド公爵様とその護衛たちが天井を見る。

 そこにはタラトとキブリンキ・サルタスが5匹陣取っていた。

 多分、本当に気が付いていなかったんだろうなぁ。

 入ってきたときも、タラトのよくわからない魔法で姿を消して入ってきていたし、そのまま天井まで登っていったしで。

 タラトが想像以上に万能である。


「これは……驚いたな。誰にも気取られずに天井に貼り付いているとは」


「驚かしてしまい申し訳ございません。多分、あの子たちにも悪気はなかったはずなんです」


「いや、構わんよ。凍りづけにされた兵士たちの報告は受けていたが、ここまで隠密性の高い従魔を連れているのか。戦う側としてはたまったものではないな」


 タラトの持っている本来の能力については伏せておこう。

 どうやらロベラウド公爵様たちは知らないみたいだし、自分から教える必要もないよね。

 会談自体は和やかに進んでいるから、水は差さないようにしよう。

 あとは、王弟がどのように動くかかぁ。

 憂鬱だなぁ。

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