417. 旧王都ヴィンラウド
私たちを乗せた馬車は、予定通り旧王都までたどり着いた。
旧王都はヴィンラウドという名前の街に変わり治政が行われている。
事前に聞いてはいたけど、本当に街の外でスラム街が形成されているなぁ。
「ヴァードモイ侯爵様、このままヴィンラウドに入るんですか?」
「さすがにこのまま入るのは危険だ。使いを送り、内部から護衛の兵を出してもらう」
なるほど、私たちのことは知らなくてもヴィンラウドの兵ならわかるということか。
その使者というのはすでにでていたようで、すぐに迎えの兵士たちがやってきた。
おそらく、ヴィンラウドに駐留しているという貴族の旗を掲げた兵士たちである。
ただ、やはり凍りづけにされた兵士たちを見て腰が引けているね。
それは仕方がないか。
「ヴァードモイ侯爵様、迎えの兵が到着しました」
「ご苦労。このまま案内してもらえ。捕らえた兵士たちの監視体制は事前の打ち合わせ通りに」
「かしこまりました」
連れてきた兵の大半は、捕らえた侵略兵たちの監視にあたるらしい。
キブリンキ・サルタスたちもほとんどが一緒に残るようで、すでに話は通っていたみたいだ。
彼らを残し、私たちはヴィンラウドの中に入って行く。
ヴィンラウドは去年の冬に来たときよりも少し落ち着いているように見える。
ヴァードモイ侯爵様によれば、それは気のせいではなくて事実らしい。
前王の時代よりもかなり犯罪件数が減ったらしいね。
犯罪者たちも投獄されたあと、証拠があればすぐに処分を言い渡され、それまでは見逃されていた犯罪も厳しく取り締まられたようだ。
恐怖政治みたいな側面はあるけど、そこまでしないと治安がよくならなかったということだろう。
どうにもならないよね、そこは。
私たちはそのまま貴族街にある屋敷へと案内された。
そこで貴族流の派手な歓迎を受けたあと、応接間へと通される。
応接間に行ったらヴァードモイ侯爵様と今後の予定の確認だ。
ちなみに、ここで話す理由は屋敷の主に対する牽制もあるらしい。
一緒の馬車に乗っていたんだから、ここでする必要性ってあまりないものね。
「リリィ、しばらくの間はこの屋敷に滞在することになる。私の屋敷はすでに引き払ってしまったからな」
「わかりました。どれくらい滞在するんですか?」
「屋敷の主とは王弟との間で連絡が取れるまでと決めてある。王弟の出方次第では少し長引くかもしれぬな」
「それって大丈夫でしょうか?」
「いろいろと懸念材料はあるが、仕方があるまい。護衛としてキブリンキ・サルタスを2匹ほど借りるが構わないな?」
「はい。本人たちが構わないなら」
「キブリンキ・サルタスたちとは話を付けてある。お前も用心しろよ」
話に一区切りが付いたところで屋敷の主が来たようだ。
やってきたのはヴァードモイ侯爵様より一回りくらい年上のおじさん。
年齢は高そうだが覇気は失われておらず、いかにも貴族らしい人物である。
「ようこそ、ヴァードモイ侯爵。それから、リリィだったな。私はガリアスティ = ロベラウド。旧王国では公爵の地位を授かっていた者だ」
この人がいまヴィンラウドを治めている貴族様か。
なんとか友好的に話を進めていきたいね。
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