第三章 北の地へ
413. 戦時賠償について
ヴァードモイへの侵攻が終わり、1週間が過ぎた。
その間も凍りついた兵士たちは凍りついたまま、それ以外の兵士たちは街の外に作られた檻の中で暮らしている。
なお、檻はタラトに作ってもらった。
それが一番早くて頑丈だったからだ。
時間が凍ってる檻とかどうやって破壊すればいいのか。
一般兵はそんなところだけど、将校や貴族については厳しい取り調べが行われたらしい。
その結果、今回のヴァードモイ侵攻を企てたのはモロガワード侯爵、その支援をしたのはコリニアス王弟だったようだ。
王弟の名前とか初めて聞いたよ。
ともかく、首謀者はそんな感じでそれ以外はコリニアス王弟またはモロガワード侯爵の命令で動いたみたいである。
北の貴族であるメルト子爵もコリニアス王弟の命令で動いたそうで、本人は乗り気ではなかったそうだ。
メルト子爵領でもマナスパイダーシルクを作っているため、蜘蛛型モンスターの恐ろしさは十分理解している。
それでもコリニアス王弟の命令は逆らえなかったとか。
代わりに、自分の首と賠償金を引き換えとしてメルト子爵領から出陣した兵士の助命を嘆願したようである。
命令には逆らえないけど自分の失態は自分で取る、なんというかいい領主だね。
そんな話をなぜ私が知っているかというと、いまヴァードモイ侯爵様から聞かされているからだ。
主にこれからどうするかについての相談のためにである。
「私の考えとしてモロガワードは処刑、メルトは賠償金と引き換えに助命、兵士たちは……お前の好きにしてもらおうと思う」
「私の好きに? ヴァードモイ侯爵様、私に責任を負わせようとしてません?」
「そんなわけがなかろう。今後、再びヴァードモイに敵兵が攻めてくる可能性もある。その芽を潰すにはある程度の兵を解放してやる必要があるのだ」
「ある程度解放する。なるほど、私たちの強さを広めるためにですか」
「やはりお前は賢いな。多少解放しただけでは王弟に処刑される可能性がある。だが、その人数が多ければどうなる?」
「捕らえきることができず、各地に逃げられてしまう。そして、そこからヴァードモイの街の状況が噂として伝わっていくんですね?」
「そうだ。そうなれば、再度挙兵となっても兵の集まりが鈍く、また士気も低くなるだろう。その状態であれば、もしお前が不在でも撃退は容易い」
ふむ、私がいなくてもか。
確かに、私が常にヴァードモイにいるとは考えられないし、私がいなければタラトも不在になる。
タラトが不在でもいまのヴァードモイにはキブリンキ・サルタスがいるから、よほどのことがない限り諜報戦で負けたり奇襲を受けたりすることはないけど、用心するほうがいいに決まってる。
できる手はすべて打っておこうという算段か。
うん、悪くないね。
「わかりました。特に問題が起きたわけでもありませんし、一般兵についてはすべて解放してしまいましょう」
「すべてというのもなんだが、処刑する理由もないか。わかった、そのように取り計らおう。その上でお前には頼みたいことがある」
「私も北に行けばいいんですよね?」
「話が早いな。タラトの力を見せつける必要もある。頼めるか?」
「わかりました。一緒に行きます」
ヴァードモイ侯爵様の寄子巡りの次は、分かれた国のうち北にある国に向かうか。
この秋は結構忙しいなぁ。
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