412. 戦後処理

 戦が終わったあと、ヴァードモイは平穏を取り戻した。

 正確に言うと、戦の当日までヴァードモイの市民はなにも知らされていなかったため、平穏もなにもなく、いきなり攻めてきたと思ったらヴァードモイ侯爵様から戦が終わったことの説明を受けることになったわけなのだ。

 そのとき、凍りづけの兵士たちも実際に見せ、ヴァードモイの強さをアピールしていたけど、これはほかの領地に対する牽制だろう。

 平和に繋がるのならいいことである。


 それで、そのあと街がどう変わったかというと、各門で警備をするキブリンキ・サルタスが2匹に増えたり、警邏の兵士とキブリンキ・サルタス、ロックウルフが増えたりしたくらいで街は平穏そのものだ。

 ヴァードモイの住民はいまさらキブリンキ・サルタスやロックウルフがいることには驚かないし、それらのモンスターのおかげで治安がさらによくなっていることもわかっている。

 キブリンキ・サルタスがいれば不審者を見つけるのは簡単だし、スリや泥棒なんかはロックウルフが持ち前の俊敏性を活かしてすぐに捕まえてしまう。

 去年の秋、ロックウルフが街に来たときは戸惑う様子もあったが、兵士の言うことをちゃんと聞き、市民にも親切なロックウルフはすぐに街に馴染んだ。

 キブリンキ・サルタスたちは言わずもがなである。


 こんな感じで、街中の監視体制はちょっとだけ厳重になった。

 もっと厳重になったのは街の外だ。

 土地の開拓をしていたキブリンキ・サルタスたちも呼び戻してヴァードモイ一帯の山狩りを決行したのである。

 近隣の村の猟師さんたちにも協力してもらい、山小屋なども徹底して探したんだけど、誰かが勝手に使った形跡がそれなりに出てきたんだよね。

 それ以外にも野営をした形跡があったり、モンスターとの戦闘痕があったり。

 ヴァードモイの情報はそれなりに集められていたようだ。

 キブリンキ・サルタスたちも野菜や山菜がありそうな場所を中心に探すから、余計な衝突を避けるために人の痕跡がある場所は探さないんだよね。

 今回はそれが裏目に出た感じかな。


 そういった報告書がまとまり、ヴァードモイ侯爵様へ報告するとヴァードモイ侯爵様も思うところがあったらしく、今後は警備体制を変えるそうだ。

 いままではキブリンキ・サルタスたちの自発的な山歩きと警備隊の探索に頼っていたところを、今後は山野の調査もペアを組ませて行うようにするみたいである。

 ヴァードモイの警備兵が一緒なら一般人がキブリンキ・サルタスに出くわしても事情説明ができるし、警備兵が一緒にいることでキブリンキ・サルタスも山小屋などを調べることができるようになる。


 街の警備はともかく、外の警備が微妙に疎かになっていたことも今回の反省点だね。

 私が口出しできることはないけど、キブリンキ・サルタスたちのご機嫌取りくらいはやっておこう。

 さしあたっては、来年の春に植える野菜や果物の種と苗の発注かな。

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