411. モロガワード侯爵の行方
この主戦場である東にはいなかったモロガワード侯爵。
その行方だが、ばっちりキブリンキ・サルタスたちに補足されていた。
本営にしていたさらに東の陣地にいるらしい。
ただ、もうすでに捕らえてあるらしいんだけど。
『主戦場に発生した巨大な氷を見てすぐに逃げ出そうとし始めたため、そちらを監視していた者たちが捕らえたそうだ。その中にモロガワード侯爵とやらもいたようだな』
「ふーん。どうしますか、ヴァードモイ侯爵様?」
「狙われたのはお前でもあるのだぞ? ……まあ、よい。移送用の馬車を向かわせるのでそれまで身柄を預かっておいてもらいたい。それで、北と南はどうなっている?」
『北は互いににらみ合ったまま動かなかったところに巨大な氷の柱が発生し、敵軍が戦意喪失して投降。南は氷の柱発生と同時に我らの仲間が襲いかかったので、こちらの被害なく無力化できたぞ』
「戦そのものは完全勝利というわけか。あとは戦後処理の問題だな」
『そうなるな。我らの手を借りたかったら契約主と交渉してもらいたい。我々も穏やかに暮らしたいので手を貸そう』
「助かる」
なるほど、もう敵兵の討ち漏らしはないのか。
よし、それなら安心だ。
それで、今後なんだけどどうすればいいんだろう?
ちょっとヴァードモイ侯爵様に聞いてみようか。
「今後……今後か。基本的には政治的な話になる以上、リリィに頼むことはあまりないな。ただひとつだけ頼まれてほしいことがある」
「頼まれてほしいこと? なんでしょう?」
「捕虜を送り返すときリリィも一緒に来てもらいたい。一般兵はそのときあちらに気前よく返してやるとしよう」
「ああ、敵兵の前で氷の柱の中から解放すると」
「そうすれば、二度とこのようなことを考える者もいないだろう。今回襲ってきた貴族どもを捕虜にして身代金を要求するが、リリィの取り分は7割程度でいいか?」
「え? そんなにいりませんよ。私はたいして働いていませんし」
「お前は働いていなくとも、今回の戦で最大の戦功を挙げたのはタラトとキブリンキ・サルタスたちだ。その報奨金はその主人であるお前に行くべきだろう」
そうか、そういう理屈か。
プラムさんとしても、これを断ってしまうと今後の軍規に影響が出るのでもらっておけとのことだった。
私が断ってしまうとほかの兵士たちへの支払いに影響が出るらしい。
特に、今回は兵士たちもキブリンキ・サルタスが持ってきた情報をまとめてヴァードモイ侯爵様に報告し、それを受けた侯爵様が私と対応を協議してさらにキブリンキ・サルタスを動かし、最終的な決着もタラトとキブリンキ・サルタスたちだけで終わらせている。
現場の兵士としては情報の伝達と戦場での威嚇だけだったわけで。
確かに、私が断ったら報酬を受け取れないだろうなぁ。
よし、このお金はキブリンキ・サルタスたちの食事代を除いてどこかに寄付しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます