409. 防衛戦当日
すべての下準備が終わり、ついに決戦の日となった。
まあ、向こうから通告があったわけじゃないので、こっちが調べて知っているだけだけど。
私たちヴァードモイ陣営は街門の外に作られた野戦陣地で侵略兵を待ち構える。
もちろん、これも罠付きだ。
「ふむ、接近するまで存在を気付かせない幻影の魔法か」
「そうじゃな。魔力の消耗も激しく狭い範囲しか隠せない上に視覚情報しかごまかせぬのであまり使わぬが、今回は役に立つじゃろう」
「かたじけない、プラム殿」
「気にするな。さて、キブリンキ・サルタスよ。敵兵はどの辺りまできておる?」
『もうすぐ壁の上から視認できる距離だ。だが、いままでつかんだ情報にはない動きをはじめた』
「なに?」
『一部の部隊が南側に分かれたな。そちらからも攻めるつもりか』
「なるほど。どうする、リリィ?」
「えっと、そっちの確保はキブリンキ・サルタスたちに任せてもいい?」
『わかった。完全に分かれたあと、気付かれないように捕まえてしまおう』
やっぱりキブリンキ・サルタスたちは頼りになるなぁ。
指揮官を務めているキブリンキ・サルタスの指示で、30匹ほどの群れが南方向へと進んでいったしあっちは任せても大丈夫だろう。
こっちはこっちの仕事をしないと。
「ヴァードモイ侯爵様! 敵兵が見えてきました!」
「よし、そのまま引きつけろ!」
どうやら壁の上から見える距離まで来たみたい。
速度を落とした形跡はないらしいから、このままヴァードモイを取り囲むつもりなんだろう。
さて、ヴァードモイ侯爵様はどの時点で動くかな?
「プラム殿、この幻影はどの程度の距離まで隠せる?」
「そうじゃな……やつらがいきなり壁攻めをはじめない限り、布陣し終わっても気付かれないじゃろう」
「では、ぎりぎりまで隠していただけますかな?」
「よかろう。しかし、その距離に入る前にリリィとタラトで一網打尽にすることも可能じゃぞ?」
「それは相手が攻撃してきたときに。一応、用件を聞きますので」
「わかった。では、任せよう」
こっちの方針も決まり、待つことしばらく。
敵兵がついにやってきた。
いきなり攻めてくるようなことはせずに、部隊を固めているね。
うん、やりやすい。
「我は王弟殿下よりの使者、モロガワード侯爵である! 門を開けよ!」
を、あちらからひとり出てきて名乗りを上げた。
あの人がモロガワード侯爵なのかな?
『契約主、あれはモロガワード侯爵ではないぞ』
「違うの?」
『似ているが別人だ。おそらく影武者だろう』
「じゃあ、本物はどこにいるの?」
『さすがにここからではわからないな。敵の拠点に残っていれば仲間が見張っているだろうし、一緒に来ているのであればあの中にいる。たいした問題ではない』
「それもそっか」
結局、どこにいても捕まえるのは変わらないからね。
どのタイミングで出ていくんだろう?
「さて、私の出番か」
「え、ヴァードモイ侯爵様が直接出向くんですか?」
「陣の中から応答するだけなら問題あるまい。言い分だけは聞いておかねばな」
これも貴族の流儀ってものなんだろうか。
いざとなったら私たちがどうにでもするから本当に問題ないんだけどね。
「貴様がモロガワード侯爵だと! 本人はどこだ!」
ヴァードモイ侯爵様が返答をすると同時に幻覚を解く。
敵兵は門の前にしっかりとした陣地が構築されてるのを見てちょっとざわついている。
そこまで兵の練度も高くない?
「な!? 貴様、何者だ!」
「私のことを知らないとでも? 私はヴァードモイ侯爵、この地の領主だ! それで、モロガワード本人はどこだ!」
「なにを言う! 我がモロガワードだ!」
「はったりを言うな! 貴様はモロガワードの影武者だろう! 本人を連れて来い!」
うーん、舌戦。
どのタイミングで仕掛けていいのかな?
様子を伺っていると、ヴァードモイ侯爵様がこちらを見て頷いてきた。
もうやっちゃっていいらしい。
よし、終わらせよう。
「タラト!」
『任せて!』
タラトがジャンプして両者の間に降り立ち、地面に糸を突き刺す。
すると、そこから蜘蛛の巣が敵陣目がけて広がっていき、敵陣全体を包み込む。
そして、蜘蛛の巣が巨大な氷の柱となり、敵兵をすべて凍りづけにしてしまった。
完璧!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます