408. 防衛戦の前の準備

 私が戦場に立つにあたり、入念な準備を施すこととなった。

 ぶっちゃけ、戦場全体を埋め尽くすほどの罠である。

 タラトにかかれば一瞬でできるものなんだけど、これをかわせる兵士なんていないんだろうなぁ。


「リリィ、準備は終わったのか?」


「はい。あとは、キブリンキ・サルタスたちがここに敵兵を誘導してくれるのを待つだけです」


「わかった。北側の兵はどうする?」


「どうしましょう? こちらと同じタイミングでキブリンキ・サルタスたちが仕掛けて捕まえますか?」


「うーむ、逃がしたくはないが、戦功をすべてリリィに与えるのもまずい。敵陣などを逃げ出せないよう密かに蜘蛛糸で取り囲むことはできぬか?」


「どう? キブリンキ・サルタス」


『不可能ではないが、先手として罠を張っておくなら我々ではなくタラトの罠の方がいいだろう。我々の罠は最悪燃やせば抜けられるが、タラトの罠ならば辺り一面を火の海にしたところで抜け出せないはずだ』


「……そうなの、タラト?」


『うん。できるね』


「じゃあ、そっちにも罠を張ってきて」


『わかった。キブリンキ・サルタス、リリィをお願いね』


『心得た。罠を頼む』


 私たちを残してタラトが北の陣地方面へと向かっていく。

 場所はキブリンキ・サルタスから伝えてもらっているからすぐわかるはず。

 私たちがヴァードモイ侯爵様をはじめとした、今回の主要将校の会議中には戻ってきたからね。


「タラト。罠はちゃんと張れた?」


『うん。張ってきたよ。あれなら逃げ出せないんじゃないかな?』


 タラトが蜘蛛糸を張ってきたという範囲を地図に示してもらうと、確かに敵軍を包囲するように蜘蛛糸を張り巡らせてきたようだ。

 これじゃあ、もう逃げる場所もないね。


「タラト、ご苦労だった。皆も見ての通り、相手の本陣であろう東は足元全体をタラトの糸が、側面を突いてくるための部隊である北には逃げられないための糸を配置してある。諸君らには申し訳ないが、今回の戦場はリリィがそのほとんどを支配することとなった。私も含め、ヴァードモイ防衛隊がやることは東では不審に思われないための囮、北側は十分な戦力での押し返しだ」


 まあ、仕方がないよね。

 私が本気を出すということになると、こういうことになる。

 退路すらタラトの糸で塞いじゃうから、戦う前に逃げ場がなくなっているわけだ。

 なぜ私を狙ってきたのかはわからないけど、しっかりと私の怖さを思い知ってもらおう。

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