403. 北を偵察

 まず、私にできること、それは北の偵察だ。

 もちろん、私が直接動くんじゃなくてキブリンキ・サルタスたちにお願いする形にはなるんだけど。

 私が直接動くとなると、プラムさんたちに猛反対されるだろうし、敵の本陣を壊しにいくことになっちゃうからね。

 最初はキブリンキ・サルタスたちだ。

 問題は動いてもらえるかだけど。


『ふむ、わかった。数十匹の群れを使って森の北側を偵察に行こう』


「いいの? 本来のお仕事とは違うけど」


『構わない。街が平和でなければ落ち着いて作物探しもできん。それに、本当に戦争となれば、街の民に被害が出る。我々の得意とする戦術は待ち伏せだ。先に敵情視察を行うのは当然だろう』


 うん、やっぱりこの蜘蛛は考え方がすごい。

 いまさらではあるけど、キブリンキ・サルタスたちがいれば守りを固めるのは十分じゃないだろうか。

 実際の戦闘はタラトに任せればいいんだし。

 ……どう考えても、私の存在が国の防衛力の大部分を担っているな?


『それで、いつから調べればいい?』


「あ、できるだけ早い方がいいかな」


『わかった。今日の昼の間に仲間を手配して夜には偵察に行けるようにしよう』


 この子たちって夜目も利くんだっけ。

 恐ろしい集団だなぁ。



○●○●キブリンキ・サルタス



『各員、揃ったな?』


『問題ない。それで、本当に侵略者の陣地などあるのだろうか?』


『それを確かめるのも我々の使命だ。この前捕まえた男たちがなんのためだったのかを含め、謎のままでは気持ちが悪い』


『理解した。それでは開始といこう』


 夜の暗闇、さらに森の木々がわずかな星や月の明かりも隠す中、我々キブリンキ・サルタスは音を立てずに進んでいく。

 この程度の移動は得意中の得意だ。

 我々自身、そこまで戦闘力が高いとは思っていないが、蜘蛛糸で拘束できれば多少の力の差は逆転できる。

 そういう意味で、人間相手というのは油断しなければ安全な部類だ。

 さて、本当に敵陣なるものがあるのか?


『なかなか見つからないな』


『秋のこの時期は森の中をゴーレムがうろつく時期だ。森の中に陣を構えることはできないだろう』


『そうなると、森を抜けた先か』


『そうだな。そこまでは周囲を警戒しつつ速度を上げて移動してもよさそうだ』


 秋の森はドリーブズゴーレムとかいうゴーレムが森の中をうろつくようになる。

 我々にとっては蜘蛛糸で絡め取れる程度の力しかないためたいした脅威ではないのだが、人間にとっては巨体からくり出される一撃が脅威となっているようだ。

 動きは決して早くないが、重量任せの攻撃は得意、そんな種族だ。


 そのドリーブズゴーレムも夜は出現しないのか、接敵することなく森を駆け抜けていく。

 さて、そろそろ森を抜けるが、そこにはなにがあるかな?

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