402. 尋問を終えて

「なるほど。密偵たちはお前の姿さえ知らなかったか」


「はい。それにタラトが進化していたことも知りませんでした。本当に私を狙っていたんでしょうか?」


 尋問を終えてヴァードモイ侯爵様の元に戻り今後の対応を話す。

 今後の対応と言っても、本当にできることは限られているというか、やるべきことが見つからないのだが。


「キブリンキ・サルタスよ。あの密偵たちは本当にリリィの外見を知らなかったのだな?」


『それは間違いない。契約主のことを知り軽いパニックを起こしていた。あれが演技であれば、相当な腕の持ち主だ』


「ふむ。そうなると密偵どもを解放もできんが、密偵の主はリリィのことをどこで知り、なんのために狙ったのかが気になるな」


 そこが一番不思議なんだよね。

 あれの主が王弟だったり第三王子だったりするなら、直接顔をあわせているから『黒髪のエルフ』くらいは伝えられるはずなんだ。

 タラトの進化は知られていないとしても、私の容姿をまったく知らないとかはありえない。

 一体、どこの派閥が放った密偵なんだろう?


「さて、どうする? リリィが望むなら身辺警護の兵士を出してもいいが?」


「うーん、その必要はないかと。私の周りには常にタラトがいますし、なんだかんだでキブリンキ・サルタスも1匹はいます。人間の兵士が少し増えても威嚇にすらならないかと」


「それもそうだな。しかし、本当にどこの馬鹿者が送り込んできた密偵なのか……」


「あはは……」


 馬鹿が送り込んできた密偵というのは全面的に同意である。

 ターゲットの容姿すら知らない密偵ってなんの意味があるんだろう?

 やっぱり、キブリンキ・サルタスたちの警戒網を調べるため?

 でも、今回は山菜調査に出ていた子がたまたま見つけたらしいし。

 うーん、わからない。


 細かいことを考えすぎても私にはなにもわからないはず。

 ちょっとキブリンキ・サルタスたちに頼んで警戒網を広げてもらおうかな。

 もしかしたらなにか見つけることができるかも。

 なにもないのが一番だけど、侵略の芽は早めに摘み取らないとね。

 そもそも、ある程度の数になったキブリンキ・サルタスに勝てるほど強い相手が出てきているとは思えないし、できる範囲で調査してもらおう。

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