395. キブリンキ・サルタスの開拓地
オクシット男爵領に着いた翌日、オクシット男爵が予定しているというキブリンキ・サルタスたちの居住地へ案内してもらう。
そこはオクシットから馬車で5時間くらい離れた平地だった。
ただ、近くに水場があり環境としては悪くない。
キブリンキ・サルタスたちにとっては街と離れているくらい気にしないだろうから、いい立地なんじゃないかな?
本人たちはどう感じているんだろう。
『ふむ、なかなかいい場所だな』
「ええ。選りすぐりの場所を選ばせていただきました」
『しかし、場所がよすぎるな。オクシット男爵、ここは我らが開拓するのでほかに移住者を探せ。この農地であれば我らが数匹、指導と警護にあたれば相応の収穫が見込めるだろう。我々はもっと厳しい土地でも構わない。いまならタラトもいるので、新しい湧き水を作ることも可能だしな』
「そ、そうですか?」
『開拓民がいないのであれば我々が耕すのも構わないが、ここであれば人が耕すのもそこまで難しくはないだろう。畑は作るので人を呼び込め。あとは、ここにできる村に人が定住できるような施策を施すといい』
「わ、わかりました」
うーん、キブリンキ・サルタスって恵まれた環境すぎてもだめなのか……。
いや、最終的な発展を望んでいる?
この土地にはたくさんのキブリンキ・サルタスたちを連れてきているから、複数に分散してもあまりきつくはないんだよね。
そこまで考えての発言なのかな?
お野菜蜘蛛の考えはよくわからない。
『それで、ほかに候補地はないのか?』
「そうですね……ここよりも少し寒い地域になりますが、そこでもいいのでしたら」
『牧畜を行うなら多少寒い方が都合がいいと聞く。そこに案内してくれ』
再び馬車に揺られること3時間くらい、新しい土地へとやってきた。
ここも結構豊かな土地だけど、確かにちょっと寒い気がする。
普通のお野菜だと生育に影響が出るかな?
『よし、ここにしよう。湧き水もあるし、新たに水場を作る必要もなさそうだ。この土地ではどのような作物が育つ?』
「ええと、やはり主力は小麦です。そのほかにも季節ごとに野菜が豊富に作られています。我が領は地域によって特色が大きく違うので、栽培される野菜も異なるのですよ」
『なるほど。ならば、いろいろな種や苗を植え、どのようなものが育つかを調べるのが一番か。なにはともあれ、まずは畑の準備をしなければならないな。どの程度の土地を使ってもいい?』
「この場所でしたらどこまででも。私の直轄地ですし、ほかに地主などもいません。好きなだけ耕作範囲を広げてください」
『わかった。それでは始めよう』
あー、キブリンキ・サルタスに好きなだけって言っちゃった。
どれだけ耕すことになるんだろう?
今回も畜産をする予定だから放牧地を含んだ面積を耕すんだよね。
この場所もでっかいキブリンキ・サルタス村になるのか。
自分たちが耕せる範囲の限度は知っているようだけど、それが人の何倍も広いからね。
人の何倍も早く畑仕事ができて人の何倍も収穫できる、本当にお野菜に関しては反則だよ。
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