387. 土地の活用方法

 ため池ができたと思ったらキブリンキ・サルタスたちはすぐに用水路を引き始めた。

 本当に手が早いな。


「ねえ、この辺りってなにを育てるの?」


『そうだな。ジュネブ子爵といったな、この地域の気候はどのような気候なのだ?』


「そうですね、周囲の領地に比べると少々寒い気がします。雨もそこまで多くはありません。それなりには降ると思いますが」


『わかった。我らが知っているもので言えば豆類だな。あとは一部のイモ類なども適しているだろう。これらは痩せた土地でも育てやすいと聞くし、第一段階としてはそこだな』


 豆類……大豆とかかな?

 あとイモはジャガイモとかだろうか。

 この世界でもジャガイモはよく見かける食材だから、種芋の入手はなんとかなるだろう。

 豆の方は大丈夫なのかな?

 そこのところを聞いてみると、別の人物から答えが返ってきた。

 ヴァードモイ侯爵様だ。


「冷涼な気候で育つ豆なら知っている。ヴァードモイではよく育たないのであまり見かけなかっただろうが、ヴァードモイより北の領地では栽培されているぞ」


「そうだったんですね。じゃあ、苗とかも?」


「商業ギルド経由なら手に入るだろう。そうだな、アリゼ?」


「難しい事ではありません。イモも手配しましょう。ほかになにか希望はありますか?」


『そうだな……牧草の種は手に入るか?』


 牧草?

 牧草なんて作ってなにをするんだろう?

 キブリンキ・サルタスはお野菜蜘蛛ってイメージしかないけど、牧草でなにをするんだろうか?


『ああ、それか。冷涼な気候なら牧畜もできると長から習っている。夏に暑くならないのであれば、羊や牛、馬などを育てられると聞いた。肥料用の堆肥を作ることもできて一石二鳥かと考えてな』


 この蜘蛛、牧畜の知識も持っていたのか……。

 ただ、詳しい世話の方法などはよくわかっていないため、飼育係として詳しい者も連れてきてほしいと要望された。

 やり方さえ教えてもらえれば基本的な作業は自分たちでできるので、体力の衰えた老人でも構わないそうだ。

 年配のご隠居様なら見つけられそうだし、ここは話に乗っておこう。


 だけど、牧草を育てるために牧畜開始は数年先にするそうだ。

 なんというか、本当に人より賢いな。


「ほかにはなにか作らないの?」


『ふむ。我々にも知識の限界がある。この地域の気候は我らの住んでいた土地とは異なるものだ。契約主はなにかいい作物を知らないか?』


「少し寒い地域の作物か……とうもろこしとかそばの実?」


『我らは聞いたことがないな。食べられるのか?』


「とうもろこしは黄色い粒々がたくさんついた……野菜? 穀物? そばの実は……穀物かな」


『穀物ということは小麦と似たようなものか?』


「うーん、そばの実は似た感じだろうけど、とうもろこしはどうかな?」


『とりあえず育ててみるか。種は手に入るか?』


 それはちょっと私にもわからない。

 この土地の領主であるジュネブ子爵やアリゼさんに聞いてみると、そばの実は私の言っている特徴そっくりな物を栽培しているのでそれを譲ってもらうことになった。

 とうもろこしはプラムさんしかわからなかったみたいなので、この国にはない作物なんだろう。

 こっちはプラムさん経由で手配しようかな。


 ……ところで、用水路を広げているキブリンキ・サルタスたちがものすごく広い範囲を耕してるんだけど大丈夫なんだろうか?

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