385. ジュネブ子爵家
アグリ子爵家を出て3カ所はトントン拍子に話が決まり、次が10番目の家となる。
家名はジュネブ子爵家。
ここの家は農業を推奨しているようだけど、なかなかうまくいっていないらしい。
ヴァードモイ侯爵様に聞くと、土地が痩せているそうだ
キブリンキ・サルタスたちならなんとかできるかな?
とりあえず、行ってみないと。
私たちはジュネブ子爵家の応接間に通され、さほど待たされずにジュネブ子爵が現れた。
裕福ではない家らしく、痩せ細った男性だ。
「ようこそ、ヴァードモイ侯爵様、ジュネブ子爵家へ。そちらのお嬢さんが今回のテイマーだという」
「リリィだ。相変わらずせっかちだな」
「申し訳ありません。なにぶん性分なもので」
「リリィです。よろしくお願いします」
「そのように下手に出なくてもよろしいですよ。リリィ様は銀級商人であられる。子爵である私などよりは発言権が上なのですから」
「それとこれとは話が別です。やっぱり初対面の方とは互いに敬意を持って話すべきかと」
ここまで話すと、ジュネブ子爵は感極まったように涙ぐんだ。
私、そんなにおかしなことを言ったかな?
「その言葉、我が家の御用商人にも聞かせてやりたいですな。あちらも銀級商人なのですが、立場を笠に着て偉そうに……」
「リリィは発想が普通の商人とは違うが、礼儀はわきまえているからな。突発的にとんでもないことを言い出すことがあるが、それにさえ慣れれば優秀な商人だ」
突発的にとんでもないこと……身に覚えがあるなぁ。
よし、反応せずに聞き流そう。
身に覚えがありすぎて困る。
「それで、今回貸していただけるモンスターは農業のプロフェッショナルだとか」
「そうだな。下手な農民よりもはるかに知識を持っている。誰から聞いた?」
「デグサル男爵からでございます。それにコルスト男爵からも推薦の文が届いておりました。あの武人コルスト男爵が太鼓判を押すモンスターであるなら信用に値するでしょう」
やっぱりコルスト男爵っていろんなところから信頼されているんだ。
脳筋なおじさんだったけど、本当はすごいんだね。
ちょっとイメージがずれてるなぁ。
「では、受け入れに応じてくれるのだな、ジュネブ子爵」
「もちろんでございます。ただ……」
「ただ?」
「……お支払いできる金銭があまりありません。あと、蜘蛛たちには野菜を現物支給ということでしたが、そちらもあまり蓄えが」
「なるほど。リリィ、どうする?」
「キブリンキ・サルタスたちの貸出金については割り引いてもいいですし、余裕ができたときの分割払いでも構いません。あと、キブリンキ・サルタスたちの給金のお野菜ですが、土地と種や苗を与えておけば自分たちで栽培してそれを報酬にするはずです。いかがでしょう?」
「それは魅力的な提案なのですが……何分、我が領内の土地は痩せており」
「そこも含めてキブリンキ・サルタスたちに見てもらいましょう。とりあえず、今日これからは時間的に難しいので、明日の朝からで大丈夫ですか?」
「それはもう。よろしくお願いします」
本当に腰が低いな、ジュネブ子爵は。
もう少し威厳があった方がいいかもしれない。
とりあえず、作物の増産で自信を持ってもらおうかな。
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