381. リシアちゃんの専属護衛

 応接間で今後のことについて打ち合わせをしていると、まだ少女になりきれていないような年頃の女の子がやってきた。

 身に着けているドレスは私が作って挙げたものである。

 オーダーは『スパイダーシルク本来の色を活かしてほしい』ということだったので、外側のシルクを少し氷彩蜘蛛の糸を交ぜたシルクにして光沢を出した白いドレスだ。

 うん、なかなか似合っているね。


「ごきげんよう、皆様。私、リシアと申します。本日はリリィ様にお礼を申したくお邪魔させていただきました」


「リシアか。そのドレスがリリィの作品だな。上品な色合いがよく似合っているぞ」


「ありがとうございます、ヴァードモイ侯爵様。それで、リリィ様というお方は?」


「ん? ああ、コウの隣に座っているのがリリィだ」


 やっぱり私は認識されていなかったか。

 面識がなくちゃ仕方がないよね。

 オーラとかそういうものも皆無だし。


「し、失礼いたしました。リリィ様、今回は本当によいものを作っていただき、まことに感謝いたします」


「いえ、気にしないでください。それよりも、気に入っていただけましたか?」


「はい! それはとても! 大事なお茶会のある日しか着ることを許されませんが、それほど家族にも大切にされているドレスです! 本日、リリィ様がお見えになるということで、実際に着ている姿をご覧いただきたかったのです」


 そんな気遣いをしてもらったんだ。

 でも、亜麻色の髪に真珠色に近いドレスが良く映えている。

 本当に会心の出来だったんじゃないかな!


「本当に良くお似合いですよ。亜麻色の髪とドレスのコントラストが輝いて見えます。もっと自信を持っていいですよ!」


「ありがとうございます。少々、髪の色はコンプレックスでしたので、このドレスを作っていただき勇気が出てきました。いずれ、お金が貯まったらまた注文をするかもしれません。その時はよろしくお願いいたします」


 そこまで気に入ってもらえたかぁ。

 私としてもとっても嬉しいなぁ。

 職人冥利に尽きるってやつだね。


「さて、リシアの紹介も済んだことですし話を続けましょう。そちらのキブリンキ・サルタスというモンスターについては、これまで話をしてみて危険性のない種族だと私も感じました。そこでなんですが、街の警備をある程度したあと、問題が起きなければ追加で1匹お貸しいただけませんか?」


「追加? なにに使う?」


「リシアの専属ボディーガードとしたいのです。もちろん、リシアが嫌がらなければですが」


「ふむ。リリィ、どうする?」


 うーん、個人の護衛か。

 私の家でもアミラを護衛してくれているから、できないことはないと思うんだよね。

 あとはリシアちゃん次第かなぁ。


「私は貸し出しても構わないと思います。キブリンキ・サルタスはどう?」


『そこの娘を守ればいいのだな? それならば構わないぞ。子供はどの種族にとっても宝だ』


 ああ、キブリンキ・サルタスたちにとって子供ってそういう認識だったんだ。

 とりあえずリシアちゃんがキブリンキ・サルタスにふれあった結果、特に怖がる素振りを見せなかったということで、街の警備で問題が出なかったら追加を呼び寄せるということになった。

 うん、順調にキブリンキ・サルタスたちが浸透していっているな。

 いいことである。

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