317. 革鎧を新調しよう

 ウラちゃんの金属鎧入手計画は失敗に終わった。

 ただ、それに打ちひしがれているのはウラちゃんだけで、エルサちゃんとシェルチェちゃんは気にしていない。

 多分、こうなることを予測していたんだろう。

 うん、私も予測していた。


 そうなると、革鎧となることで私のお店に戻ってきたんだけど、予算的にはかなり余裕がある。

 武器の方も新調するそうだが、そちらの予算を差し引いてもまだ防具用の予算が余っているのだ。

 これは結構いい装備をお勧めできそう。


「3人の予算だとウラちゃんは赤階級の冒険者が身に着ける物まで買えるね。残りのふたりは平均的な青冒険者装備になるけど」


「ちょ、ちょっと待ってください! 私たち、緑冒険者ですよ!?」


 ウラちゃんは慌てているけど事実だから仕方がない。

 結構やるね。


「予算がそれくらいあるんだよ。武器の取り分を除いても、それだけの余裕があるの。3人とも、がんばって稼いできたじゃない」


「それはもう。護衛旅で街を転々としながら、新しい街ではモンスターを倒して回りましたから」


「やはり、エルサさんがいるのは大きいですわ。ロックウルフたちが獲物を運んでくれますもの」


「そんなことないですよ。私ひとりじゃあれだけの数を倒せませんから」


 やっぱりこの3人は息が合っているようだ。

 なかなかいいパーティだね。


「そういえば、武器はどうするの?」


「そうですね。それぞれ得意分野の武器を新調する予定です」


「ということは、ウラちゃんは鈍器、シェルチェちゃんは魔法発動用の杖、エルサちゃんが短槍か。それならいい物があるよ」


「いい物?」


 私はリュックを置き、中身をあさる。

 プラムさんがじっとにらんでくるけど、ダンジョンで見つけた装備は出しませんって。


「はい、これ」


「これ……金属でできた骨?」


「メタルスケルトンやメタルジャイアントの骨だよ」


 うん、メタルスケルトンやメタルジャイアントの骨が余ってしまったんだ。

 私の自家用魔道車の金属部分に使ってもらおうと商業ギルド経由で送ったんだけど、量が多すぎるということで戻ってきたのがこれである。

 冒険者ギルドに持ち込んでもよかったのだが、量が中途半端になっていたため自分の手元に残しておいた。


 正直、不要品でもある。


「メタルスケルトンやメタルジャイアントの骨って……赤階級の冒険者が使うような装備の素材じゃ……」


「そうだね。ただ、それは素材費用が高いってだけで素材持ち込みだと結構安く作ってくれるらしいよ。余った素材は鍛冶師に渡すことが条件だけど」


 前にテイサさんに確認を取っておいた。

 素材持ち込みならかなり安く作ってくれると。

 余った素材は返せないが、それでもいいなら上質の装備を作ると約束してくれていたんだよね。

 私たちにはもうメタルスケルトンやメタルジャイアントの装備はいらないから、ここらで有効活用してもらおう。


「すっごくほしいですけど、お値段はどれくらいですか?」


「私のお店で革鎧一式を発注していってくれるなら50万ルビスにまけてあげる。それでどう?」


「買います! それで買います!」


「毎度あり」


 市場価格は80万ルビス程度と聞いていたから問題ないだろう。

 あとは全員の体格を測って装備に使う革を決めるんだけど、全員の体格が前に来たときよりがっしりしていた。

 冒険者としてしっかり成長している証拠だね。

 革鎧の発注もしっかりしていってくれたし、早めに仕上げてあげよう。


 あれ、でも、武器の新調が終わらないと狩りに出ない?

 まあ、早い分にはいいよね。

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