318. コニエリットの来訪

 3人の防具は3日でできた。

 基本的な型紙はあったから、商業ギルドに頼んで革を取り寄せるだけで済んだんだよね。

 なかなか効率的でよろしい。


 できた防具だけど、引き渡しは明日なので、今日は裏にしまっておく。

 自信作なので喜んでもらえるといいな。


 そんな感じで店の営業をしていると、お店の前に立派な馬車が止まった。

 うん、やな予感。


「遊びに来たわ、リリィ!」


「ここはお店なんですから遊びに来ないでください、コウ様」


 最初はなんだかわからないでいたほかのお客様も、私が名前を出したことでヴァードモイ侯爵家のコウ様だと気付き、臣下の礼をとる。

 でも、それをコウ様はあまり面白くなさそうな顔で見てるんだよね。

 コウ様、こういう場ではそういう顔を隠して。


「姿勢を楽にしていいわよ。私も今日は客として来たんですもの、買い物を楽しんでちょうだい」


 いや、領主の娘から買い物を楽しめと言われて楽しめるほど肝の据わった人は少ないでしょう。

 実際、先に店の中にいたお客様はそそくさとお店を出ていったし。

 あれが当たり前の対応だよね。

 コウ様が普通じゃないんだ。


「んー、私って嫌われてる?」


「嫌う嫌わないの問題ではありませんよ。領主の娘がいきなり現れ、客として来たなんて言われたら居心地も悪くなりますって」


「そういう物なんだ」


「そういう物です。せめてお忍びでやってきてください」


「はーい」


 わかっているんだかわかっていないんだか。

 それにしても今日はなにをしに来たんだろう?

 ドレスの発注ではないだろうし。


「ああ、今日はコニエリット様を案内してきたの」


「コニエリット様を?」


「はい。お久しぶりです、リリィさん」


「お久しぶりです、コニエリット様」


 とりあえず立ち話もなんなので、お店は休業とし二階にある応接室で話を聞く。

 コウ様は本当に案内しに来ただけらしいんだけど、コニエリット様にはちゃんとした目的があったそうだ。

 私の作る白冒険者向け防具をガレット伯爵領でも輸入したいらしい。


「ガレット伯爵領の冒険者ギルドで伺ったところ、ヴァードモイで売られている白冒険者向けの防具は、買いやすい値段でありながらしっかりと体を守ってくれると評判らしいのです。それで私が出向きヴァードモイの冒険者ギルドと交渉したところ、リリィさんの名前がでてきたため直接交渉にあがった次第です」


 ああ、あれか。

 そういえば、ヴァードモイ侯爵領でしかほとんど出回っていないんだっけ。

 領を超えようとすると多額の税金がかかることがあるから、他領へはあまり持ち出されていないらしい。

 私が修理に出向くこともできないから使い捨てになるしね。

 あれは安く作っている分、壊れやすいのだ。


 そこのところを説明すると、それでも構わないので売ってほしいと言われた。

 さて、売るのは構わないんだけど、どうやってどのくらいの量を運ぼうか。


「運ぶのはコニエを積んできた冷凍魔道車両が戻るときの積み荷としてくださると助かります。量は……このくらいでいかがでしょう?」


 ふむ、結構多いけど、壊れることを想定してだとこれくらいの量は必要になるか。

 私としてもそこまで作るのに手間はかからない。

 普通なら革を切ったり縫ったりする必要があるけど、私なら魔法裁縫でぱっとできちゃうからね。

 コニエリット様がこの量でいいというなら、まずはこれだけ輸出してみようか。

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