306. ガレット伯爵領到着

 ヴァードモイ侯爵様との会談の2日後にヴァードモイを鳥便で出発、さらに2日間かけてガレット伯爵領までたどり着いた。

 メンバーは私のところが私とプラムさん、タラト、キブリンキ・サルタス3匹。

 ヴァードモイ侯爵家から将校のギャンさん含め24人。

 それから、コニエリット様とその従者たち5人だ。


 正直、人数不足なのは否めないが、タラトがいるだけで人数不足なんてどうにでもなる。

 ヴァードモイ侯爵家から来ている兵士のみんなも、気は抜いていないがまともな戦闘になるなんて思っていない。

 私がその前に割り込むからね。

 そういう手筈になっているし、無駄な怪我人を出さないためにもそうするべきだ。


 ガレット伯爵領まで到着すると、商業ギルドの正門はすでに兵士たちによって固められていた。

 空から見てみると裏口にも兵が見張りについている。

 完全に商業ギルドは孤立しているね。

 どこに着陸するんだろう?


 先頭を飛んでいるギャンさんが着陸目標に定めたのは冒険者ギルド前だった。

 あそこなら人はほとんどいないし問題ないだろう。

 これだけ大型の鳥が集団で飛んできていれば通行人も避けてくれるだろうからね。

 実際、なんの問題もなく着陸したし。


 鳥便から全員が降り装備を調えていると、冒険者ギルドから衛兵たちが流れ出してきて私たちを取り囲む。

 冒険者ギルド前に完全装備の兵士が降り立ち、装備を調えていたらこうなるか。

 衛兵たちの中を歩いて出てきたのはギルドマスターかな?


「お前たち、何者か! ここをガレット伯爵領と知っての行いか!」


 あちらのギルドマスターが叫び衛兵たちが槍を構えてくるが、ヴァードモイ侯爵家の兵は誰ひとりとして反応しない。

 黙々と装備を調え、旗をかざした。


「その旗、ヴァードモイ侯爵家だと!?」


「いかにも。我々はヴァードモイ侯爵家直下軍。冒険者ギルドと事を構えるつもりはない。本来降り立つべき商業ギルド周辺がガレット伯爵家軍と思われる手勢で囲まれていたためこの場を借りた。不躾な真似をした非礼を詫びよう」


「い、いや、その件はわかった。衛兵、槍を収めよ」


 あちらの命令で衛兵たちが私たちに向けていた槍を天に向けた。

 とりあえず、冒険者ギルドと交戦の意思がないことは伝わったようだね。


「して、ヴァードモイ侯爵家がなぜガレット伯爵領に兵を送ってきた?」


「ヴァードモイ侯爵家が所有していたコニエの木をガレット伯爵家が不当に占拠したと報告を受けた。我々はそれを取り戻すためにやってきた」


「むう……あれか」


 どうやら、ガレット伯爵領の冒険者ギルドでも事態は把握しているみたい。

 早くここを通してくれないかな。


「しかしながら、ここはガレット伯爵領だ。ガレット伯爵領にヴァードモイ侯爵家が介入したとあればマクファーレン公王家が黙ってはおるまい。そこは大丈夫なのか?」


「以前、コニエの木を購入する際、マクファーレン公王家にお伺いを立て『好きにしろ』と返答を受けている。マクファーレン公王陛下はその約束を守るお方だろう」


 物は言いようだなぁ。

 まあ、ちんたらマクファーレン公王家にまたお伺いを立ててる暇なんてなかったわけだけどね。


「事情はわかった。冒険者ギルドとしてはどちらにも荷担しない。これでよいな?」


「助かる。それでは道を空けてもらえるか?」


「承知した。道を空けろ!」


 私たちを取り囲んでいた衛兵が退き、道が作られる。

 ギャンさんは一礼すると兵士たちの先頭に立ち指揮を始めて動きだした。

 私たちも遅れないようについていかなくちゃ。

 まずは商業ギルドの周りにいる軍の制圧だね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る