241. タラト VS. ドラゴン

 タラトと幻獣のドラゴンとの戦いは……こう、なんというか、わりと一方的だった。

 力はドラゴンの方があるみたいなんだけど、タラトの方が圧倒的に素早く攻撃をかわし続ける。

 かわしたあとはカウンターとばかりに蝕肢を使って攻撃し相手のウロコを凍らせて割るのだ。

 それが何回か続いたあと、ドラゴンは空に跳び上がってブレスを吐いてきた。

 それもタラトは落ち着いて対処し、蜘蛛糸の盾を作って身を守る。

 ブレスが収まったらそのまま蜘蛛糸を飛ばしてドラゴンを縛り上げ、地面に叩きつけた。

 ここでドラゴンは敗北を宣言。

 タラトってば、本当に強くなっちゃって……。


『あいたたた。なにも本気で投げ飛ばさんでも』


「キュイ」


「ごめんなさい、って言ってます」


『なに、独り言だ。しかし、タラチュナトスか。ヒト族では幻獣と同じクラスの災害に指定されているようだが、内包している力の強さがまったく違うな。本気で我が相手をしても捕食されるだけか。前脚を使わず蝕肢だけで戦っていたのもそのためだろう。前脚で我を突き刺していたのであれば肉を貫くことも容易かっただろうに』


 え、そこまですごかったの?

 タラトも前脚で頭をポリポリかいているし、本当みたい。

 タラトってば、どこまで強いのよ。


『さて、それにしても人の里にタラチュナトスが出現したか。これは困ったもの、と言いたいところなのだが、お前の従魔としてしっかりつながりがある以上、問題はなさそうだな』


 よかった、ドラゴンからもお墨付きをいただけた。

 これでタラトも一緒に街で暮らすことが出来る。


『しかし、それにしてもなぜタラチュナトスなどという化け物が人に従う? あまりにも奇妙な話だ』


「あ、それは私がタラトを初めから育てていたからじゃないでしょうか?」


『初めから? 一体いつから育て始めたのだ?』


「うーん、そろそろ1年でしょうか。最初はラージシルクスパイダーでした。その頃から戦闘力はそこそこありましたけど、進化を重ねるにつれてだんだん強くなっていきましたね」


 私がいままでのことを話すとドラゴンは更に首をかしげた。

 なにかおかしなことでも言ったのかな?


『娘よ。本当に始まりはラージシルクスパイダーか?』


「はい。ラージシルクスパイダーでした」


『そうなると進化の系譜にあわぬ。タラチュナトスはディザスタースパイダーから進化するもの、シルクスパイダー系列などという生やさしいものではない』


 あれ、そうだったんだ。

 でも、タラトはこうしてタラチュナトスとして存在しているわけだし。

 どうなっているんだろうね。


「ドラゴンよ。発言してもよいかの」


『なんだ。吸血鬼の娘よ』


「そのタラチュナトスは儂を閉じ込めていた呪玉を食らってから進化した。それでつじつまは合わぬか?」


『呪玉だと!? なぜそのような危険物が出てくる!』


「儂に聞くな。儂もいつの間にかさらわれて、気がついたら呪玉から解放されていたのだからな」


『むぅ。呪玉の魔力を吸収したとなるとつじつまが合う。だがそうなると、今度はそこの娘に従っている理由がないのだ。呪玉などというものを取り込めばその魔力で精神汚染をされるはずだからな』


 精神汚染なんてされるんだ、あの石は。

 あれ?

 それじゃあ、タラトが言っていたあれって。


「あの、ひとつ心当たりが」


『なんだ、申せ』


「タラトが進化したあとに『モヤモヤしていた』と言っていました。それがなにか関係あるのかも」


『呪玉の魔力を『モヤモヤする』で納めるとはな。その蜘蛛、とんでもない精神力の持ち主だ!』


 ドラゴン様が『ガッハッハ』と大笑いしているけど、私にとっては気が気でない。

 タラトはなにも言っていなかったけど、そんな危険な状況だったんだ。

 もう少し早く言ってくれればなにか対処を考えたのに。

 我慢強いのもほどほどにね。

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