206. 王都動乱

「ぐっ……」


「さて、大人しく観念する気になったか?」


「まだだ! 導きあれ!」


 仮面がそう叫ぶと急に倒れた。

 他の連中も同様に倒れたけどなんだろう?


「……毒による自決か。また面倒くさいことを」


「父上、どうするのじゃ?」


「ひとまずこの都を制圧する。異端懲罰官どもが荒らし回っているようで収拾が付いていないらしい。有志や騎士団などが異端懲罰官やその解き放ったモンスターなどと戦ってはいたみたいだが、区別が付かなくなることを恐れ下がってもらった。都を落とすのは時間の問題だろう」


「それで、制圧した後は?」


「そこが問題だ。国王はこのざまだし、速やかに政権基盤を引き継いでくれる者が現れてくれることを望むのだが」


 ……国王様、殺されちゃったしね。

 でも、国のあとを継ぐ人って決まっているのかな?

 こういうときは王太子とかがいるんだと思うけど。

 あるいは王弟とか。


「サザビー様、申し上げます!」


「なんだ?」


 どこからともなく現れた新しいSFスーツの人がサザビー様に報告している。

 なにがあったんだろう?


「……まずいな」


「なにがあったのじゃ、お父様?」


「ルマジャよ、この国の王位継承順は?」


「はい。第一王子が第一位、王弟が第二位、第二王子が第三位、以下、第三王子、王弟の第一子、第四王子、第四王女、第五王女、王弟の長女と続きますが……それが?」


「第一王子と第二王子が暗殺されていた。他の王子と王女は無事だったようだが、国は荒れるな」


「王弟殿下ですか……。あまりいい噂は聞きませんね。そこで死んでいる愚王よりはマシなのでしょうが」


「そうか。とりあえず、王の亡骸と侵入者どもの死体を渡す。案内せよ」


「はっ!」


 仮面の連中は念のためタラトの糸で厳重に梱包してから担いでもらう。

 逆に王様はタラトの糸を剥がしておいた。

 ややこしくなりそうだからね。

 それじゃなくてもややこしくなりそうなのに。

 ともかく、生き残った王族は同じ部屋に集められて警護されているということだったのでその部屋へとやってきた。

 警備の人に頼んで部屋の中に入れてもらうと沢山の美男美女が……。

 ただ、全員の表情が険しいのは現状を考えてだろう。


「生き残りの王族は集まっているようだな。私はダーシェ公国公王サザビー、突然の訪問申し訳ない。だが、我らがいなければもっと被害が広がっていたことも自覚していただかねばな」


「なにを! 貴様らが来なければ兄さんたちは……!」


「貴君が第三王子か? 我々が来たのは呪玉という邪法に囚われていた娘を迎えに来るため。今回はその呪玉をこの国の王が『国の宝』と呼び奪い取ろうとしたことから端を発した戦。それに、お前たちを襲った仮面どもはゲイズ教の異端懲罰官だ。我々とは関係がない」


「ゲイズ教だと? なぜゲイズ教が私たちを襲わなければならない!」


「ひとつは呪玉を使った者たちの口封じ。ひとつはこの国を攻め落とす口実だろう。呪玉の呪いで滅びた国を浄化するためゲイズ教が乗り込む、茶番だがあらすじとしては形が付く」


「……ならば、お前たちで異端懲罰官も始末すればよかったものを」


「異端懲罰官は姿を現すまで我々ですら認識出来ん。そういう魔道具を使っているのか呪法を使っているのか、それすらもわかっていない。街で暴れている異端懲罰官も我が軍が制圧しているようだが、被害はそれなりに出ているだろう」


 うーん、難しい話が続くなぁ。

 私、帰っちゃだめかなぁ?


「それで、私たちはなにを決めればいい?」


「次代の王を。すぐにでも民をまとめられる王を決めよ」

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