204. 謁見の間

 城門を抜け(内部の兵士は既に眠らされていた)、ルマジャさんは王宮内を迷うことなく歩いていく。

 どうやら王宮へは何回も来たことがあるらしく道は把握しているそうだ。

 いま向かっている場所は謁見の間。

 王はそこにいるだろうという読みだそう。

 いなかったら別の場所を探せばいいだけだとも言っているけどね。


 途中で兵士や騎士が出てきてもゼナさんによってすぐに眠らされてしまい障害にならない。

 私たちはそれを避けて進むだけだ。

 やがて豪華な装飾を施された扉の前にたどり着いた。

 ここが謁見の間らしい。

 でも、他の冒険者さんたちが押しても引いても扉は開かない。

 どうやって入るんだろう?


「ルマジャさん、どうやって入るんですか?」


「ん? こうやってだ!」


 ルマジャさんはいきなり魔法を放ち、謁見の間の扉を壁ごと吹き飛ばしてしまった。

 でも、謁見の間の扉が歪んでいないけどなんでだろう?


「やはり魔法耐性のある扉か。壁ごと破壊して正解じゃった」


「うむ。でかしたぞ、弟子よ。さて、入るとしよう」


「はい。ああ、内部には少し仕掛けがあります。それも発動してから破壊してしまいましょう」


「わかった。任せるぞえ」


 中に罠があるんだったら先に破壊してから入ろうよ……。

 でも、ふたりやサザビー様、ゼナさんは気にしないで入っていくし。

 私たちも続くとしよう。


 謁見の間の中は破壊されて吹き飛んできた扉がある以外、特に変わった物はない。

 王様が座るのであろう玉座とかはあるけど、謁見の間だったら普通だろう。

 後は……あれ、天井に付いているでっかいお椀みたいな物はなんだろう?

 私がルマジャさんにあれがなんなのか聞こうと思った瞬間、天井から黄色い光が降り注いだ!

 これ、なんなの!?


「ふはははは! 調子に乗って攻め込んできたはいいが、この謁見の間まで来たのは間違いだったな、ルマジャ!」


「……弟子よ、あれはなんじゃ?」


「この国の愚王です。その役目もすぐに終わりを迎えるでしょうが」


「なんの話をしておる! お前たちは封魔牢に閉じ込められているのだぞ!」


「封魔牢? なんですか、ルマジャさん」


「捕らえた相手の魔力を奪い動けなくする魔道具じゃ。ほれ、天井にあるあの魔道具から光が出ておるじゃろう」


「あ、本当だ」


「……そういえば、お主、封魔牢の中でも普通に動けるのだな」


「え? あ……」


 よく周りを見渡したら他の冒険者さんたちはみんな倒れていた。

 平気なのはルマジャさんにプラムさんたちと私くらいだ。

 あれ、タラトは?


「ん? あれはお主の指示か?」


「あれ?」


「タラトが封魔牢を破壊しようとしておる」


「え!? まずいんじゃ!?」


「いや、儂がこの後破壊するつもりであった。タラト、壊してよいぞ」


「キュイ!」


 タラトが封魔牢の発生装置を糸でぐるぐる巻きにして引っ張ると、封魔牢の発生装置は天井から外れ勢いのまま壁に叩きつけられた。

 タラトが糸を解くと中から出てきたのは発生装置の残骸。

 派手に壊したなぁ。


「な……封魔牢をこんな容易く壊すだと……?」


「前から言っておったじゃろう。あの装置は時代遅れの骨董品だと。一定以上の魔力がある者にはまったく効果がない。その上、簡単に壊れるような物が最終防衛線などと聞いて呆れるわ」


「ちっ!」


 あ、王様が逃げた!

 でも、タラトが糸を飛ばして王様の身動きを封じ込めちゃった。

 うーん、この王様、本当に頭が……。

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